最新記事

中国

慰安婦カードを使わせる中国――習近平とサンフランシスコ市長の連携プレー

2017年11月30日(木)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

筆者に送られてくるサンフランシスコ発のメールの中に、突然、慰安婦に関する情報が増え始めたのは、今年10月半ばのことだ。

サンフランシスコ市長が貴州省に

ちょうどそのころ、何が起きていたかというと、サンフランシスコのエドウィン・リー市長が、中国の貴州省を訪問していた。エドウィン・リーは中国名「李孟賢」という在米華人だ。中国の広東省に本籍があるが、アメリカのシアトルで生まれたため、アメリカ国籍を持っている。2011年1月にサンフランシスコ市長に当選。サンフランシスコでは初めての在米華人による市長就任である。

中国政府の通信社である「新華網」が、大々的に李孟賢市長誕生の祝賀報道を行なった。中国メディアではエドウィン・リーの中国名、李孟賢を用いて報道しているので、以下、李孟賢のみを使用する。

その李孟賢は2017年10月14日、中国の貴州省を訪問している。

貴州省は習近平総書記が、第19回党大会(中国共産党全国代表大会)の「代表」選挙に当たって選んだ選挙区だ。

党大会の代表選挙は2016年10月に開催された中共中央政治局会議で発布された選挙通知に従って、8カ月間をかけ2017年6月まで行なわれた。全国8900万人の中国共産党党員の中から党大会に参加する約3000名の代表を選出する。党の代表を選ぶので投票権を持っているのは、当然、党員のみである。

中央にいるチャイナ・セブンは、この政治局会議で、どの選挙区を選ぶかを決定した。それによれば、たとえば習近平は「貴州省」という選挙区に決まり、李克強は広西省に決まった。

習近平に話を限れば、2017年4月、習近平は貴州省全党員の全ての票を得て満票で貴州省代表に当選している。中共中央総書記が選挙区に選んだとなれば、貴州省の人気は上がるし、選んだからには、その理由がある。

実は理由は二つあり、一つは貴州省の貧困度が高く経済発展を促さなければならないという側面で、もう一つは習近平子飼いの陳敏爾が貴州省党委員会の書記を務めており、陳敏爾を応援したかったからだ。今年7月に重慶市の書記、孫政才が拘束されたことから、陳敏爾が重慶市の書記に就任し、すわ、「ポスト習近平」かと話題を呼んだことがある。

そんなことから、李孟賢は中国を訪問するのに、自分の本籍地である広東省ではなく貴州省を選ぶというのは、なかなかに目先が利く御仁(ごじん)ではないか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アンソロピック企業価値1830億ドル、直近の資金調

ビジネス

米財務長官、次期FRB議長候補の面接を5日開始=W

ワールド

米政府、TSMCの中国向け製造装置輸出巡る特別措置

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ249ドル安 トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中