最新記事

アメリカ社会

アメリカ献体市場レポート 売られた部位が語るドナーの悲劇

2017年11月10日(金)12時30分

マッカーサー氏は、医学的研究に有用か調べるため、遺体の一部と同梱されていた書類を検証した。同氏の検証は、米国組織バンク協会などのために自身がドラフト作成に関わった安全と倫理基準に基づいて行われた。

その結果、リストア・ライフが提供する遺体の病歴は不十分であり、書類はずさんで不適切だと、マッカーサー氏は結論付けた。このような理由から、同社が販売する検体は、マッカーサー氏の大学の使用基準を満たしていない、としている。

「これほどひどいのは初めてだ」とマッカーサー氏は言う。「このような状況では、将来のドナーや献体への信頼性について心配になる」

敬意と尊厳

ロイターは購入から数カ月後、リストア・ライフのジェームズ・バード社長にコンタクトを取った。社長は経営方針について、次のように簡単に説明した。

「ドナーの家族と直接コンタクトを取るため、われわれのような団体は特に責任があると考えている。個人的な関係を築くため、そこにはある程度の敬意と尊厳がある」

バード社長はその後、取材や書面での質問に答えることを拒否するようになったが、ロイターによる購入を批判する内容のメールを送ってきた。

「われわれの団体に助けを求める人たちに、トムソン・ロイターの取材チームが関心のないことは明らかだ。最も助けを必要としている人たちを傷つけたいだけだろう」

リストア・ライフは、がんや認知症や他の疾病の治療薬を開発する研究者に遺体の一部を供給するという良い仕事をしている、と社長は付け加えた。

「さまざまな研究において、世界的に有名な研究者たちに協力することにより、われわれは数えきれないほと多くの人たちの助けとなっている」

遺体の一部を供給することにより、リストア・ライフがどのような「良いこと」を成し遂げたいのかはさておき、同社の遺体の扱いは「どうしようもなく劣悪」で、研究者の役に立ったり、コディ・ソーンダースさんと同社がロイターに販売した頭部2つの持ち主である不特定の男女に報いたりすることはできないと、マッカーサー氏は指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中