最新記事

欧州

欧州、次の「トランプ爆弾」警戒 米国のイラン核合意破棄に衝撃

2017年11月1日(水)16時41分

一方、フランスのマクロン大統領は、革命記念日の祝賀式典に招待するなど、トランプ大統領に対して最大限のもてなしをしている。2人は先月、国連でも会談している。

「(トランプ大統領の)考えを変えることを諦めてはいない」と、気候変動とイランを巡るトランプ大統領の姿勢について、マクロン大統領はニューヨークでこう述べた。

しかし、イラン核合意の否認は、米国政府が今後さらに破壊的な「爆弾」を一斉に落とす前兆かもしれない、と欧州当局者らは懸念している。

次は通商を巡って衝突が起こる可能性が高く、トランプ大統領が再交渉し、破棄する構えも辞さない北米自由貿易協定(NAFTA)が「試金石」だと、欧州のある上級外交官は語った。

NAFTAが崩壊すれば、欧州企業、とりわけメキシコで生産し米国に輸出しているドイツの自動車メーカーは大きな打撃を受ける可能性がある。

また、トランプ大統領が鉄鋼製品への関税を導入するなら、中国だけでなく欧州の輸出企業も直撃を受けることが懸念される。

「これまでのところ、トランプ氏は通商について、いろいろと吠え立ててはいるが、まだ噛みついてはいない。だからといって、ずっとそのままでいるという訳ではない」と、この欧州外交官は話した。

「極めて保護主義的な措置に対する心構えが必要だ。欧州企業に対して、直接的もしくは間接的に不利益を与えるいかなる措置も、負のスパイラルをもたらすだろう」

反米主義

もう1つの懸念分野は北朝鮮である。朝鮮半島で軍事衝突が起きた場合、欧州内の反応は「イラク戦争と同じくらい混乱」しかねない、とドイツのシンクタンク「国際公共政策研究所(GPPI)」のソーステン・ベナー所長はみている。

欧州世論は、そのような衝突において、米国を侵略者と見なしかねず、そうなれば反米感情は高まり、欧州の指導者がトランプ氏を支持するのを困難にさせ、いかにそれが非現実的であろうと、米国と袂を分かつことを求める声が一段と高まることになりかねない。

「当面はトランプ氏に向き合わねばならず、同氏が去っても(関係が)修正されないかもしれないという事実に目を向けるべきだ」と、ドイツのある外交官はロイターに語った。「これは現実に存在する問題で、対処しなくてはならないということを、人々はまだ理解していない」

こうした反米感情を懸念して、ドイツを拠点とする外交政策専門家ら約10人は今月、トランプ氏を理由に米国に背を向けるドイツ政府に警鐘を鳴らす声明を発表した。

前出のイッシンガー元大使もこの声明に賛同しており、対米関係がさらに悪化しかねないことを懸念している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中