最新記事

EU

核危機「調停力」失うEU、冷え込む北朝鮮との裏ルート

2017年10月9日(月)13時13分


秘密交渉

EU加盟国の大使館と北朝鮮とのつながりは何年も前にさかのぼる。共産主義のチェコスロバキアは、北朝鮮への主要な重機輸出国だった。チェコスロバキアは、ポーランドとルーマニアと共に、ソ連の衛星国として1948年に北朝鮮と国交を結んだ。

北朝鮮に大使館を置くのは、EU7カ国や、ロシア、中国、キューバなど24カ国にすぎない。

仲介役としてのEUの立場は、スウェーデンに依存するところが少なくない。同国は1973年、西欧の国としては初めて北朝鮮と外交関係を樹立した。

スウェーデンは、1953年の朝鮮戦争休戦協定の監督や査察、そして軍事演習の監視を行い、北朝鮮と韓国の信頼を醸成する目的で設立された中立国監視委員会のメンバーである。

チェコスロバキアも1990年代初めまで同委員会のメンバーだった。

スウェーデンは今年、カナダ人牧師ヒョンス・リム氏、そして米国人学生オットー・ワームビア氏の北朝鮮からの解放において、大きな役割を果たした。しかしスウェーデンは、EUによる制裁を強く支持している。

北朝鮮にあるEU7カ国の大使館は、同国政府から派遣された北朝鮮人職員が密告する可能性があるため、発言できる内容に制限があると、前出のEU外交官らは言う。

「制裁と圧力。悲しいことに、われわれには他に手段がない」と、あるEU外交官はブリュッセルでこう語った。

北朝鮮と7か国側の協議は、通常1カ国の大使館で行われているが、拘束されている西側の国民の解放交渉が中心で、大きな外交戦略などを話し合うことはない。

とはいえ、米国と北朝鮮の戦争の脅しを沈静化しようとする努力が一段と増すなか、米朝間のメッセージを仲介する重要なチャンネルであることを証明することは可能だろう。

「北朝鮮と米国のあいだに外交ルートを開く手助けができたら最高だ」と語るのは、スウェーデンの元首相で外相経験もあるカール・ビルト氏である。

EUの動きは全て、秘密にすべきだと同氏は言う。

「EUがこうした方向で何かするなら、まずすべきは、それについて語らないことだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロン氏「プーチン氏と対話必要」、用意あるとロ大

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中