最新記事

自動車

BMWとベンツが電気自動車の量産戦略 テスラに対抗へ

2017年10月9日(月)11時59分


死のブルースクリーン

自動車業界の出身者は、既存の大手メーカーをひっくり返すのは、多くのテクノロジー業界幹部が考えている以上に難しいと話す。

テスラ出身で、今は独自動車部品メーカーのボッシュでカーエレクトロニクス部門の責任者を務めるハリー・クルーガー氏は、これまで数多くのテクノロジー企業が自動車分野で失敗してきたと指摘する。

「あの古き良きハードウエアに、どれほどの精巧さが詰まっているか過小評価する傲慢にはリスクが伴う。車を作り上げている各部品には130年分の進化があり、 痛い目にあって学んだ教訓も込められている」と、クルーガー氏はロイターに語った。

「ガジェット(電子機器)なら動作異常が起きてもどうということはないが、われわれが扱っているのは、時速160キロで走るものだ。(PCのように)『死のブルースクリーン』が突然現れるような事態は誰も望まない」

真に革新的なデザインには、厳しい安全基準という制約も課されている。車のブレーキを制御するチップが、車内の情報・娯楽を提供するインフォテインメントシステムを同時に制御することは、認められないだろう。

「曲をダウンロードしている時に異常が起きたらブレーキが作動した、というようなことがあってはいけない」と、クルーガー氏は言う。同氏によると、ハッカーがインフォテインメントシステムに侵入して自動車を操作した事例がすでに起きている。

テスラは独大手メーカーの脅威になり得るが、それは来年までに生産台数を50万台に拡大できた場合だ。また結局は、シリコンバレーの企業は、新参企業のように行動するのではなく、独大手を模倣することで自動車業界で成功を収めることになるかもしれないと、クルーガー氏は言う。

「テスラには、古い自動車業界出身の技術者が何千人といる。それが、自動車を開発できた秘密だと思う」

(翻訳:山口香子 編集:伊藤典子)

Edward Taylor

[フランクフルト 4日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、利益確定売り優勢 

ビジネス

米エヌビディア時価総額、世界初5兆ドル突破 AIブ

ビジネス

英首相、増税せずの公約確認を避ける 来月予算案で所

ワールド

ロシア軍、ドネツク州要衝ポクロフスクに迫る=ウクラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中