最新記事

アメリカ政治

国連演説に見るトランプ政権のナショナリストvsグローバリストの争い

2017年9月21日(木)18時20分

その一方で、いがみ合いがちなトランプ大統領の顧問たちのあいだに意見の相違は見られないと、ある政権当局者は明かした。

「国家安全保障会議の高官らが最も協力して作成した大統領の演説原稿だった」とこの当局者は語った。

同当局者によると、大統領が演説後、ティラーソン国務長官は起立して、主なスピーチライターであるスティーブン・ミラー大統領補佐官(政策担当)に握手を求め、「よくやった」と伝えたという。ミラー氏はバノン氏の同調者で、ナショナリストと見られている。それに比べると、ティラーソン氏はグローバルな考えの持ち主である。

「トランプ氏がトランプ氏であろうとしているだけだ」と語るのは、米大統領選でトランプ氏の選挙参謀を務めたサム・ナンバーグ氏だ。政権内の「ナショナリスト対グローバリスト」の構図は、移民政策のような国内問題においてより顕著になっていると同氏は指摘した。

トランプ政権はまた、外交政策においても複雑なシグナルを発している。

グローバリストであるゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長は今週、再交渉によって米国の利益にとって都合が良くならない限り、トランプ大統領は地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」から離脱する意向に変わりがないことを、同盟諸国に対して明確にしなくてはならなかった。

単刀直入な物言いで知られるトランプ大統領だが、国連では一部の人たちをあぜんとさせたようだ。大統領は演説のなかで、オバマ前政権が同盟国と結んだイラン核合意を非難したほか、世界の一部は「地獄に向かっている」との見方を示したからだ。

民主・共和の両政権で中東問題の交渉役を務めたアーロン・デービッド・ミラー氏は、トランプ大統領の演説について、米同盟諸国は、同大統領が世界で主要な役割を引き受けることに対する慎重さの兆候だと解釈するだろうと指摘。

「最大の問題である北朝鮮もイランも、米国第一主義では解決不可能だ」とミラー氏。演説は、トランプ政権内のグローバリストたちは「使い捨て」で、トランプ大統領を突き動かしているのはいまでもナショナリズムであることを示していると、同氏は付け加えた。

(Jeff Mason記者、Steve Hollan記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[ニューヨーク 19日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続

ビジネス

ホンダ、カナダにEV生産拠点 電池や部材工場含め総

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中