最新記事

核兵器

北朝鮮の「水爆」実験、対米圧力へ王手となるか?

2017年9月5日(火)11時02分

9月3日、北朝鮮が水爆実験に成功したと発表したことは、米国を射程圏に入れる核ミサイルを開発するという最終目標に向けた大きな前進だ、と複数の専門家が話している。写真はKCNAが3日配信した、核研究施設を視察する金正恩氏(2017年 ロイター)

北朝鮮が水爆実験に成功したと発表したことは、米国を射程圏に入れる核ミサイルを開発するという最終目標に向けた大きな前進だ、と複数の専門家が話している。

3日に実施した6回目の核実験について、北朝鮮は「二段階熱核爆発装置」と呼ばれる本格的な水爆の爆発を成功させたと主張。これらの核実験は豊渓里の地下で行われているため、外部から結果の確認は難しい。ただ、爆発で生じた地震の震度は米地質調査所の計測でマグニチュード6.3と、北朝鮮が水爆を開発したか、開発に非常に近いことを示す強力な証拠になった。

韓国や日本の当局者の話では、今回の爆発規模は1年前の5回目の実験時の10倍だった。ノルウェーの研究機関「NORSAR」の推定では120キロトンと、広島と長崎に投下された原爆それぞれ15キロトンと20キロトンを大きく上回る。

ソウル国立大学で核技術を研究するKune Y. Suh教授は「爆発規模は誰もが水爆実験と言えるレベルにある。北朝鮮は実質的に核保有国家としての地位を確立した。これは単なる局面の大転換(ゲームチェンジャー)ではなく、詰み(ゲームオーバー)だ」と指摘した。

北朝鮮は7月、大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験を2回実施し、米本土の大部分を射程に収めたと表明したが、専門家によると、それは現在生産可能なものよりも軽い核弾頭を搭載する場合だけに限られる。また北朝鮮は、長距離ミサイルが宇宙空間を飛行した後、大気圏に再突入する際に弾頭部分が機能し続けるための技術を持っていることはまだ証明していない。

しかし弾頭の小型・軽量化を進める上で、水爆開発は鍵になる。爆弾のサイズや重量に比べて爆発力がはるかに大きいからだ。

米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)の創設者デービッド・オルブライト氏は「これほどの爆発力を得るには、熱核物質兵器(水爆)が必要になる」と話した。もっともオルブライト氏自身は、今回の実験が純粋な二段階熱核爆発装置だという北朝鮮の発表には疑念を抱いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済「想定より幾分堅調」、追加利下げの是非「会合

ビジネス

情報BOX:パウエルFRB議長の講演要旨

ワールド

米の対中関税11月1日発動、中国の行動次第=UST

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦合意の「第2段階今始まる」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中