最新記事

ブレグジット

英に迫るスタグフレーション 日系企業はコスト高とEU離脱で苦慮

2017年9月4日(月)18時33分

9月4日、英国経済がスタグフレーションの危機に直面しようとしている。欧州連合(EU)離脱を控えた英ポンド安を背景に、輸入インフレが進行。だが、賃金伸び悩みにより、国内消費は不振で、物価高と景気後退の懸念が英経済を揺さぶっている。2016年3月撮影(2017年 ロイター/Phil Noble)

英国経済がスタグフレーションの危機に直面しようとしている。欧州連合(EU)離脱を控えた英ポンド安を背景に、輸入インフレが進行。だが、賃金伸び悩みにより、国内消費は不振で、物価高と景気後退の懸念が英経済を揺さぶっている。英国に進出した日本企業は、コスト高とブレグジット・リスクに挟撃され、対応に苦慮する展開もありそうだ。

ポンド安による輸入インフレ

英ポンドの対ドル相場は、昨年6月の英国民投票当日に1.5022ドルの高値を付けたが、4カ月後の10月7日に1.1491ドルまで24%急落。現在は、1.29ドル台まで反発しているが、安値から半値戻しも達成できていない。

「ポンドの弱い反発力は、ブレグジットを選んだ結果に対し、市場が厳しくみている証拠だ」と三井住友銀行・チーフストラテジスト、宇野大介氏は指摘。ポンドは今年末に1.25ドル、来年にかけて1.2ドルを割り込むと予想する。

EU離脱決定後のポンド安がもたらした物価上昇は、英国民の可処分所得と個人消費を圧迫し始めている。英消費者物価指数(CPI)は、昨年第4四半期の前年比1.2%上昇から、今年第2四半期の同2.7%上昇へと上げ幅を拡大している。

みずほ総合研究所・欧米調査部上席主任エコノミスト、吉田健一郎氏は、英経済は、スタグフレーションの状況に陥っていると指摘。この先も「ポンド安を背景にインフレ率が再び上昇し、実質所得が物価面から押し下げられる」とし、消費の下振れリスクが大きいとみている。

ポンドの実効レートは、今年6月の総選挙後に低下傾向となり、8月末時点で昨年10月以来の低水準にある。今後、欧州中央銀行(ECB)が出口戦略を模索するのに伴って、ユーロ高/ポンド安が進むとみられる中、「ポンドの実効レートは一段の低下が見込まれ、輸入インフレに寄与する」(吉田氏)との見方が多い。

イングランド銀行(英中銀)は8月3日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利を過去最低水準の0.25%に据え置くとともに、2017年および18年の国内総生産(GDP)伸び率見通しを下方修正した。しかし、一部のMPC委員は、ポンド安によりインフレ率が数カ月間で約3%上昇する公算が大きいとし、直ちに利上げを開始すべきと主張する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ペルー、今年は3.5%成長見通し 脱官僚主義推進へ

ビジネス

中国サービス部門の民間PMI、10月は3カ月ぶり低

ビジネス

日経5万円割れ、AI株中心に急上昇の反動 ドル一時

ビジネス

東京株式市場・前引け=大幅続落、一時2400円安 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中