最新記事

ブレグジット

英に迫るスタグフレーション 日系企業はコスト高とEU離脱で苦慮

2017年9月4日(月)18時33分


外資誘致と財政負担増

英国は雇用確保の目的から、日本を含む外資の製造業に特別な措置を講じる計画だが「大きな政府は財政に負担をかける。離脱が現実になれば経済的な損失が大きいことを、ポンド相場は織り込んでいくことになるだろう」と宇野氏はみている。

近年の英国の産業モデルは、おカネと人材を国外から誘致するという、外資中心のウィンブルドン方式で、ロンドンのシティを中心とする金融業はその最たるものだった。しかし、このビジネスモデルは世界金融危機で行き詰まった。

その後の金融緩和によって、英国では不動産や株価が上昇したが、貧富の差が拡大し、移民労働者が問題視されるなか、「ブレグジット」決定に至った。

「ブレグジットは、人とカネの動きを遮断するものだ。移民の流入は止められるかもしれないが、英国にとって必要不可欠な大陸市場を切り離せば、残るのは、巨大な財政赤字と経常赤字だけだ」と、国内大手機関のファンドマネジャーは予測する。

投資家の間では、高金利通貨を志向する風潮はあるが「スタグフレーションの通貨は運用対象外だ。英国にとって本当のカオスはまだ始まっていない」(同)という。

揺らぐ「巨大市場へのゲート」の地位

安倍首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。日本経済新聞の報道によると、日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本政府が日本貿易保険を通じて全額補償するという。先進国向け案件の貸し倒れリスクについて、国が全て引き受けるのは異例だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中外相が初会談、「相違点の管理」で合意 首脳会談

ビジネス

ビットコイン連日最高値、関連株も高い 米下院は来週

ワールド

EU、ガザ対応巡りイスラエルへの圧力強化検討

ワールド

米国務省、1350人超の職員解雇開始 トランプ氏の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パトリオット供与継続の深層
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 7
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    英郵便局、富士通「ホライズン」欠陥で起きた大量冤…
  • 10
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中