最新記事

テクノロジー

宇宙船でもエコな3Dプリンターでリサイクル

2017年9月26日(火)16時00分
メガン・バーテルズ

プラスチックの再生処理と3Dプリンターを一体化させた「リファブリケーター」 NASA/MSFC/EMMETT GIVEN

<宇宙船の物資も現地調達の時代。打ち上げ費用とプラスチックゴミを減らす新技術に注目>

ロケットの打ち上げには、重量1ポイント(約453グラム)につき1万ドルの費用がかかる。だから、宇宙に行くときは荷物を可能な限り軽くしたい。

だが、NASAとしては不測の事態に備えてあれもこれも積み込みたい......。そんな悩みを3Dプリンターで解決しようという研究が進んでいる。

18年春に国際宇宙ステーション(ISS)に設置される「リファブリケーター」は、小型冷蔵庫サイズの装置だ。プラスチックを投入すると、3Dプリンター用の材料に再生して、必要な物資を「印刷」する。

3Dプリンターが初めてISSに設置されたのは14年秋のこと。昨年春には2代目の「アディティブ・マニュファクチュアリング・ファシリティ」が設置された。いずれも民間のベンチャー企業メイド・イン・スペースが開発したものだ。

ただし、これらの3Dプリンターは新品のプラスチックを材料とするため、その分だけ打ち上げ費用がかさむ。そこで、リサイクル機能を持つリファブリケーターの出番だ。

一般的なリサイクルでは、プラスチックを細かく粉砕してから、別の装置を使ってペレットなどのプラスチック原料に再生させる。だが宇宙ステーション内は微小重力空間のため、何らかの粉末が発生して空中を浮遊すれば宇宙飛行士に深刻なダメージを与えかねない。

リファブリケーターは、プラスチックを粉砕するのではなく溶融し、フィラメントと呼ばれる3Dプリンター用の素材を生成する。この方法だとプラスチックが受けるダメージが少なく、何回か再利用を繰り返せるというメリットがある。新品のプラスチックを混ぜて、素材の純度を調整する必要もない。

地上でフィラメントを生成する際は、混入物などの理由で廃棄する分が大量に出る。一方、リファブリケーターは「投入されたプラスチックを全て再生する」と、開発元のテザーズ・アンリミテッドの研究開発部門を率いるレイチェル・ミュールバウアーは言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ノーベル平和賞マチャド氏、授賞式間に合わず 「自由

ワールド

ベネズエラ沖の麻薬船攻撃、米国民の約半数が反対=世

ワールド

韓国大統領、宗教団体と政治家の関係巡り調査指示

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 3
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中