最新記事

テクノロジー

ゲーセンがVR(バーチャルリアリティー)で華麗に復活

2017年6月28日(水)10時15分
ゴゴ・リッズ

ヘッドセットでは目の前に210度のパノラマ映像が広がる IMAX VR

<アイマックスのVRゲームセンターで、バーチャルリアリティーの世界に没頭してテレビやパソコンでは味わえない圧巻の仮想体験を>

ゲームセンターにずらっと並ぶアーケードゲーム全盛期に生まれた私だが、『パックマン』に熱中することはなかった。思春期になると、ゲームセンターは文字どおり「ゲームオーバー」。21世紀を迎える頃には、任天堂などの家庭用ゲーム機に撃沈されていた。

81年に80億ドルだった全米のアーケードゲーム業界の売り上げは、99年には10億ドルに激減した。ところが今、ゲームマニアが再び街に繰り出している――バーチャルに進化したアーケードゲームを求めて。

ヒッピー文化の教祖として知られた心理学者のティモシー・リアリーはかつて、バーチャルリアリティ(VR)を90年代の幻覚剤と呼んだ。90年代半ばには、セガがVRを中心とする大型娯楽施設「ゲームワークス」を米シアトルにオープン。ただし当時は画質が悪く、アーケードのVRゲームが現実の世界らしく見えるようになったのは、ようやく最近のことだ。

今年2月、ロサンゼルスにオープンしたアイマックスVRエクスペリエンスセンターは、最先端のVRゲームを楽しめる施設。だがそこで私が最初に衝撃を受けたのは、VRアーケードのあまりに味気ない姿だ。

殺菌灯を連想させる青白い照明、事務所のような地味なカーペット、白く光る壁に埋め込まれた液晶画面。SF映画のぎらつくネオンも、騒々しい機械音や銃声の効果音もない。

広い倉庫のようなフロアは14の白いブースに分かれている。3.6メートル四方の空間で、『スター・ウォーズ』のバトルシップや地上400メートルの綱渡りなど、7種類の「没入型ゲーム体験」の世界が展開する。

ブースの中で首をすくめ、身をかわすプレーヤーは、まるで電話ボックスでシャドーボクシングをしているみたいだ。おもちゃの武器を握り締める人、自分だけに見える亡霊に向かって叫ぶ人。全員が巨大なヘッドホンをかぶり、目元は配線が伸びた黒い箱で覆われている。

アイマックスで使われるヘッドセット「スターVR」は、目の前に210度のパノラマ映像が広がる。オキュラス・リフトなど既存の家庭向け製品は110度が標準だから違いは歴然だ。

ヘッドセットを装着して3D画面を見つめると、システムが頭の動きを追跡する。上を向けば画像も上にスクロールされ、反時計回りに首を動かせば目の前の画像も回転する。

【参考記事】アマゾン、ホールフーズ買収の狙いはデータ

10分のゲームで汗だく

さらに、ブース内のカメラが全身の動きを追跡し、画像の動きを合わせる。今後は視線追跡システムも搭載され、例えばディスプレイ上で手前の物体にピントが合うと、遠くはぼやけて見えるようになるだろう。

ゲーム中はまさに現実世界を見ているかのようだが、楽しい経験ばかりではない。仮想と現実の物理的な境界線を確かめようとした私は、現実のブースの壁にぶつかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中