最新記事

米中関係

肩透かしに終わった米中「巨頭」会談

2017年4月20日(木)10時30分
J・バークシャー・ミラー(本誌コラムニスト、米外交問題評議会研究員)

始めてトランプ(左)と会った習は終始笑みを浮かべていたが Carlos Barria-REUTERS

<注目されたトランプと習近平の初首脳会談だが、シリア爆撃の影響もあり目立った話題はなし?>

肩透かしに終わった――。今月初めにフロリダ州で行われた、ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平(シー・チーピン)国家主席の初会談をひとことで表現すると、そうなるだろう。トランプはかねて中国を刺激する発言を繰り返してきただけに、習との「初顔合わせ」に世界中が注目していた。

ところが習が到着したその日に、アメリカはシリアを爆撃。世界の目は一気にそちらに移ってしまった。だが、米中関係とは無関係に見えるシリア爆撃は、結果的にトランプ政権から中国(と世界)に明確なメッセージを送ることになった。

トランプと共にフロリダ入りしていたレックス・ティラーソン米国務長官は、シリア爆撃は、アメリカが化学兵器使用を許さないという世界への「警告」だと語った。つまり必要とあらば、トランプ政権は武力行使をいとわないという意思表示だ。そこに北朝鮮を牽制する意図があるのは間違いない。

だが、シリア爆撃はトランプとの初会談を意義深いものにして、その成果を中国国内にうまくアピールしたかった習の意気込みも打ち砕いた。

【参考記事】習近平は笑っているべきではなかった――米国務長官、シリア攻撃は北への警告

トランプがホワイトハウスやキャンプデービッドではなく、フロリダ州パームビーチの別荘に外国首脳を招くことについては、アメリカ国内で大いに批判されてきた。だが習との会談に関しては、必ずしも悪いことではなかったようだ。中国で汚職追放運動を進めてきた習を居心地の悪い立場に置いたのだから。

実際、トランプの豪邸マールアラーゴは、中国側にとって理想の会談場所とはいえなかった。習はこれまで「質素な愛国者」というイメージを打ち出してきたのに、きらびやかな邸宅でくつろぐ写真が配信されるのはまずい。習の側近は、習とトランプがゴルフをする案を却下したとされる。

だが、米中貿易に関するトランプのタフな発言と、朝鮮半島の不安定な情勢を考えると、習としてはこの首脳会談を何とか実現させたかった。そのためには、会場の設定など細かな部分で中国側の要望が通らないのは我慢しなければならない。

そんな習に対して、トランプは硬軟織り交ぜた対応を見せた。空港への出迎えはティラーソンに任せ、メディアの前でも当初は、習が満面の笑みを見せたのに対して、トランプはよそよそしく見えた。それでも夕食会に入ると会話が弾み、最終的には、習と「とてもいい友達になった」とトランプは評し、その関係は「最高だ」と語った。

だが、中身はなかった。会談前は、中国が北朝鮮にもっと圧力をかけて行動を自重させるべきだと、トランプが習に厳しく要求するとみられていたが、それらしい話はなかったようだ。海洋安全保障の領域でも、突っ込んだ話し合いはなかったらしい(ただしトランプは、中国による南シナ海の軍事化と東シナ海の不安定化に不満を表明したとされる)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IBM、コンフルエントを110億ドルで買収 AI需

ワールド

EU9カ国、「欧州製品の優先採用」に慎重姿勢 加盟

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中