メイ英首相が今月EUに離脱通知 ブレグジットは実戦モードへ
EU首脳会議で欧州委に交渉権限を与えることが正式に決まれば、交渉を統括するミシェル・バルニエ氏が欧州委に対して交渉の枠組みに関する自身の見解を反映した提言をする運びとなる。こうした提言は、各国政府が検討して修正すべきは修正し、最終的に交渉の指令が固まる。そして交渉指令が承認された後、バルニエ氏のチームはようやく英国のデービス離脱担当相が率いる一団と協議に入れる。
バルニエ氏は既に加盟国に対して、優先的に交渉すべき2つの分野を提示している。1つは英国が19年に予定しているEU離脱までに支払うべき債務、もう1つは現在EU域内に住む英国人と、ブレグジット後も英国に住み続ける可能性のあるEU市民の権利や福祉に関する問題だ。
またEUと英国の新たな国境の取り扱いも優先して協議すべきだとみなされている。特に唯一の陸続きで接するアイルランドと英国は、双方ともに北アイルランドが政治的に不安定化するのを避けるためにできるだけオープンな形になることを希望している。
ただこうした問題は、メイ氏がEUとのより広範な通商協議の観点で要望している事項がどうなるか次第の面があり、同時並行的に話し合われる可能性が十分にある。交渉円滑化のためには19年以降にブレグジットの「経過措置」を導入することで合意しなければならないかもしれない。
関係者の間では既に、EUと英国がともに各国国民や企業を混乱に陥れてしまうような交渉決裂をにおわす事態が起きるとの予想が聞かれる。ある英政府当局者は「わたしは心配だ」と述べ、交渉の枠組みをどうするかで一致点が見つからなければ早々と決裂しかねないと主張。「6月にまだ交渉の場にわれわれがいるようならば問題ない。だがそれよりも前に負のスパイラルに見舞われてもおかしくない」と危惧した。
(Alastair Macdonald記者)
