最新記事

ビジネス

Airbnbを締め上げるNY新法は誰のため?

2017年1月5日(木)10時50分
ヘンリー・グラバー

ER Photographer/iStockphoto

<短期の宿泊者を募るホストを規制するニューヨーク州法の効果は微妙で、一般市民の不満を呼ぶだけ>(写真:民泊で小銭を稼ぎたい市民を罰するのは賢明なのか)

 ニューヨーク州が民泊仲介サイト、Airbnb(エアビーアンドビー)との戦いに参戦した。10月に新しい州法を成立させ、州集合住宅法に違反してAirbnb上で宿泊者を募ったホスト(貸主)に罰金を科すとしたのだ。

 Airbnbは直ちに連邦裁判所に異議を申し立てた。新法は、「(同社に)直接甚大な負担を課し、回復不能な損害を与える」というのが理由だ。同州内のホストは4万6000人、ニューヨーク市の市場は同社にとって最大の10億ドルに達する。

 新しい州法は、違法とされる貸し出しの定義を広げているわけではない。ニューヨーク州では11年から、総戸数3戸以上の集合住宅では居住者不在の状態で部屋を短期間(30日未満)貸し出すことが原則禁じられている。しかし、この州法は十分に守られていないのが現実だ。

【参考記事】東京五輪まであと4年、「民泊」ルールはどうする?

 今回の新法では、実効性を高めるために、規定に違反する広告を掲載した者に罰金を科すことにした。罰金額は1回目が1000ドル、3回目以降が7500ドル。居住中のアパート内の空き部屋に民泊客を泊めることは、今後も禁じられない。

 新法推進派によれば、ニューヨーク市で違法な短期貸しが横行する結果、賃貸住宅の供給が減り、家賃相場の高騰を招いているという。そこで、市民を困らせる短期貸しを取り締まろうというわけだ(Airbnbはこれに反論している。最近も、ニューヨーク市のホストが部屋を貸す日数は、中央値で年間44夜にすぎないとの発表をした)。

 短期貸しの規制強化は、旅行などで不在中に民泊で小銭を稼ぎたい一般市民の不満を呼ぶ可能性もある。ニューヨーク州が業者を取り締まりつつ、一般市民が民泊で少額の収入を得る道を残したければ、業者と一般市民を区別すればいい。これはAirbnbの主張でもある。

得をするのは高級ホテル

 具体的には、民泊で貸せる日数に年間の上限を設け、それを超過した場合に罰金を科せば済むことだ。しかし州法は、居住者不在でのアパートの短期貸しを原則としてすべて禁じる内容になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中