最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向

2016年9月27日(火)14時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

Rick Wilking-REUTERS

<第1回テレビ討論は、トランプの政見を徹底的に叩いたヒラリーが圧勝したように見える。しかしヒラリー自身も、具体的な経済政策はアピールできておらず、現状に不満を抱える層の動向は依然として読み切れない>

 米大統領選の第1回テレビ討論は、東部時間の26日午後9時に始まった。まず、登場した両候補の格好に驚かされた。下馬評では「赤」と予想されていたトランプのネクタイの色が「青」、そして白か水色あたりで来ると思われていたヒラリーのパンツスーツは「赤」だったのだ。

 アメリカでは、「青」は民主党のカラー、「赤」は共和党のカラーということに一応なっていて、その延長で漠然と「青は穏健的、赤は攻撃的」という受け止め方をされることが多い。そして、トランプという人はこの選挙戦を「赤いネクタイ」で戦い、予備選を勝ち抜いてきたのだ。また、ヒラリー陣営のポスターなどの色は、青で統一されている。

 それが今回は正反対になっていた。そこには「中道から左寄りの視聴者を意識して、あえて赤を外してマイルドなイメージに振った」トランプと、「勝負に出た」ヒラリーという勢いの違いが感じられた。多くの視聴者もそう思っただろう。

【参考記事】米テレビ討論、クリントン「二重の負担」で不利

 そして、実際に1時間40分の討論についていえば、ヒラリーが圧倒した形になった。序盤戦こそ、トランプはいつもの「悪ガキ口調」で茶々を入れたり、居直ったりしてヒラリーに対抗していたが、途中からはズルズルとリングサイドに追い込まれる局面が多くなっていった。

 いくつか決定的な瞬間を数えることができるが、例えば司会のレスター・ホルト(NBCキャスター、アフリカ系の穏健派)がトランプの「毎年の確定申告書(タックス・リターン)の公開」を迫った際に、トランプは「ヒラリーが消去したメールを公開するなら、自分も公開してもいい」と口を滑らせた瞬間がある。

 これに対して、ヒラリーは「個人のメールサーバを利用したのは誤りだった」とスパッと謝った上で、「確定申告書を公開したくないというのは、収入が余りにも少なくて恥ずかしいか、寄付をケチっているか、あるいは実は一銭も税金を払っていないことを隠したいかだろう」と突っ込んで「一本」を取っている。

 さらに、「イラク戦争に関しては当初は賛成だったのでは?」とホルトから突っ込まれたトランプは、「あれはハワード・スターンの番組だったから」と下ネタ系に強いDJ相手の発言だから不問にしてくれと言わんばかりの狼狽を見せて「自爆」してしまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱電機と台湾鴻海、AIデータセンター分野で提携

ワールド

米民主重鎮ペロシ氏が政界引退へ、女性初の下院議長

ワールド

中国商務省報道官、EUとの貿易・投資協定交渉に前向

ワールド

米ユナイテッドとデルタ、7日の便の欠航開始 各20
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中