最新記事

日本

天皇陛下の「生前退位」に興味津々の英国──最も高齢の王位継承者チャールズ皇太子に道は開けるか?

2016年7月14日(木)21時00分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

 天皇陛下の健康の悪化はこれまでにも伝えられてきたが、もし生前退位となれば、国としての「安定と継続性」のシンボルとなってきた日本で「衝撃となるだろう」。

 昨年、82歳の誕生日から陛下が高齢のため十分に公務を全うできなくなったと発言し始めたことを指摘した後、FTは天皇陛下の歴史に対する見方を紹介する。

 陛下は「歴史を正しく記憶することの重要性を語っている」、「歴史の記憶は、皇室と日本の右派修正主義者たちが対立するトピックだ」。

 FTは、「戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」という陛下の発言を紹介している(注:記事にはどの発言かが示されていないが、昨年の新年のお言葉ではないかと思われる)。

国民から愛されている人物

 記事は最後に、陛下のこれまでの人生の経過を記している。

 第2次大戦で英国は勝利国の1つとなり、日本は敗戦国となった。戦時中の日本軍の残虐性や捕虜の扱いについての記憶は今も英国にありありと残る。

 しかし、現在の天皇陛下は戦時中の天皇であった父親とは一線を画す人物という認識が広がっており、陛下に何らかの責任を問う論調はもはやない。BBCもFTも国民から愛されている人物として報道しており、これが裏付けられたと言えよう。

──英国での「生前退位」の意味合い

 英国にとって、日本の天皇陛下の生前退位が非常に興味深いトピックとして浮上するのは、王室の継承問題とクロスするからだ。

 王室制度が長い英国では、元首は国王(あるいは女王)が亡くなった時に、王位継承権がもっとも近い人物に引き継がれる形をとる。

 生前退位の規定はなく、本人の意思によって引き継ぎは可能と言われるものの、ほとんど実例はない。ただし、1936年、国王エドワード8世が米国人女性と結婚するために在位1年弱で国王を退位した一件がある。

 エリザベス女王は4月21日に満90歳の誕生日をむかえた。6月11日が「公式誕生日」となっているため、生誕を祝うさまざまな祝賀行事が開催された。在位は64年を超え、歴代国王の最長記録を更新中だ。

 父親(ジョージ6世)が急死し、25歳で女王となったエリザベスは「英国民のために自分の生涯をささげます」と誓った。生きている間に退位するのは想定外だ。任務を途中で放棄することなど、ありえない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中