最新記事

中朝関係

朝韓間の経済交流即時無効を北朝鮮が――中国新華社が速報

2016年3月11日(金)15時52分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

北朝鮮からの石炭輸入停止は3月1日から実行

 3月3日付の「環球外匯(外国為替)」lあるいは3月4日の「国際煤炭(石炭)網」は、「中国政府は業界関係者に、3月1日から、北朝鮮からの石炭と鉄鉱石の輸入を停止するよう命令した。日用品と食品の貿易に関しては、まだその指令を出していない」と報道している。

 北朝鮮の現場報告として、高英起氏が「中国が石炭輸入を停止、北朝鮮国内に困惑広がる...制裁が本格化」と書いておられる。この記事により立証されているように、中国が3月2日の国連安保理決議2270号が議決される前日の3月1日から、実際上、独自制裁で北朝鮮からの石炭と鉄鉱石の輸入禁止を実行していたというのは、注目に値する。

 中国では政府の無償支援としては、すでに2年前から石油の輸出をストップしているとのこと。中朝辺境貿易地区で民間企業を通して、改革開放を促すための貿易としてまだ石油の輸出を許していた。

 しかし今年2月になって、「韓国メディアによると」という形の報道だが、中国では今年2月の時点で、すでに中朝貿易の50%を停止しており、北朝鮮の銀行に対する凍結も50%実施していたという報道がある。

 日本の研究者の中には、「中朝蜜月」とみなす人がまだいるようだが、中朝関係はどこから見ても、「蜜月」などという情況は皆無だ。

 ネットユーザーの90%以上が、北朝鮮を嫌悪し、金正恩のことを「金三胖(ジン・サン・パン)」と呼ぶのはまだいい方だ。「金三胖」とは、「金ファミリー三代目のデブ」という意味だ。「金猪(ジン・ズー)」(猪:豚の意味)という呼び方もある。

 中国政府高官が金日恩を指すときには「小○子(シャオ・ホーズ)(○は人偏に火)」(あの若い奴)としか言わない。名前などで呼んだことさえない。

 それくらい、中国政府も庶民も北朝鮮を嫌い、金日恩を危険視しているということだ。

 今回の速報は、その危険視している「ならず者」の国家の一挙一動が、中国の安全・利害に影響してくることへの警戒感を示していると見ることができよう。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、6月予想外の3.3万人減 前月も

ワールド

EU、温室効果ガス40年に90%削減を提案 クレジ

ビジネス

物価下振れリスク、ECBは支援的な政策スタンスを=

ビジネス

テスラ中国製EV販売、6月は前年比0.8%増 9カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中