最新記事

全人代

習近平政権初の五カ年計画発表――中国の苦悩にじむ全人代

2016年3月7日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

13.外需が低迷しているが、「一帯一路(陸と海の新シルクロード)」構想により、国際協力を深める(筆者注:過剰生産問題のはけ口のため)。

14.外資導入の基準を緩和し、自由貿易区戦略を加速させる。中日韓自由貿易区を推進させ投資の自由化を図る。

 以上、書ききれないが、一応の骨子を列挙してみた。

 中国経済の苦悩がにじみ出ているような2016年活動計画だ。

国防費7.6%増――過去5年で最低の伸び率

 具体的な国家予算の全貌は、閉幕前までに審議され、投票して議決してからでないと公表してはならないことになっている。

 予算案は、3月4日の午後、国家財政部や発展改革員会などの関連中央行政省庁が全人代の代表(議員)に配布して、3月5日に中国政府の通信社である新華社が、一部を公開した。

 これは決定ではなく、「全人代で審議するために配布された草案」である。

 それによれば、2016年の国防予算は9543.54億元(ここだけ日本円に換算すると、16兆6440億円)で、2015年度比では7.6%増となる。

 中国の軍事費は2011年から2015年まで連続5年間二桁の伸び率(12.7%、11.2%、10.7%、12.2%、10.1%)を示しており、今回初めて一桁台となった。

 全人代の代表であり、軍事科学院国防政策研究センターの陳舟主任は5日、「ここ10年来、中国の国防費がGDPに占める割合は1.33%で、アメリカなど世界主要国における国防費のGDP比を遥かに下回るだけでなく、世界平均であるGDP比2.6%よりも低い水準を続けてきた」と語っている。

 今回の一桁台への減少は中国経済全体の減速と深く関係しており、中国が軍事大国になることを放棄しているわけではない。それどころか、本コラムでも何度も取り上げた軍事大改革を行って、軍事強国化している。ただ少なくとも30万人の兵士を削減したので、その分だけは給料支給額が減り、軍事費削減に貢献してはいるだろう。

 それにしても、上述した「2016年の重点活動」に見たように、中国経済の低迷が如実に現れた政治活動報告だった。中国はいま、これまでの本コラムで取り上げてきたように、精神面(イデオロギー的な側面)においてだけでなく、経済的にも、苦境に立たされていることが見えてくる。一党支配体制が続く限り、克服は困難だろう。

執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中