最新記事

シリア

アサド政権の「樽爆弾」が自国民を虐殺する

シリア和平協議再開に合わせて国際社会にアムネスティが突き付けた「戦争犯罪」報告書

2015年5月15日(金)15時29分
ルーシー・ウェストコット

無差別兵器 アレッポ市内の墓地に残された樽爆弾の不発弾を見詰める男性 Mahmoud Hebbo-REUTERS

 1年以上前に国連が使用を禁止したにもかかわらず、シリアのアサド政権は北西部の都市アレッポの住民に対し、悪名高いナパーム弾にもなぞらえられる「樽爆弾」による攻撃を続けている──国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが最新の報告書で指摘した。

 樽爆弾とは、石油の樽のような燃料容器やガスボンベに金属片、燃料、爆薬などを詰めた爆弾であり、ヘリコプターで上空から落とされる。住宅や病院、学校、市場、礼拝所が爆撃され、住民の命が奪われていると、アムネスティは警鐘を鳴らした。

「アレッポの民間人は想像を絶する残虐行為を受けている。シリア政府の行為は人道に対する罪に当たるケースもある」

 報告書によれば、昨年1月から今年3月の間に、アレッポでは樽爆弾攻撃により少なくとも民間人3124人と戦闘員35人が殺された。昨年2月の国連安保理決議で禁止された樽爆弾の使用は、シリア政府による違反行為であるとアムネスティは非難する。

 アムネスティは詳細な調査結果をアサド政権に突き付けたが、回答は得られなかったという。

 樽爆弾はアレッポの住民が直面する人道危機の一側面にすぎない。報告書によると、彼らは国内の反体制派からも無差別攻撃を受けているという。使用される武器の中には「地獄砲」と呼ばれるガスボンベを付けた手製のロケット砲弾もある。

 さらに住民は拉致される恐怖にも怯えている上に、水や食料、医薬品は大幅に不足しており、これ以上ない劣悪な状況に置かれている。「民間人の生活が標的にされてきた」と、報告書の主著者ニコレット・ボーランドは言う。

対シリア武器禁輸を期待

 アサド大統領は、国民に対する樽爆弾の使用を否定してきた。2月には英BBCの取材に対し、政府が民間人に無差別の樽爆弾攻撃をしたなどというのは「欧米で繰り返される幼稚な説」だと一蹴。「われわれは樽爆弾なんて持っていない」とまで言ってのけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油市場は均衡、3─4月に需要増加へ=ロシア副首相

ビジネス

三菱重、通期の純利益を上方修正 一転して増益予想に

ビジネス

CKハチソン、パナマ相手に仲裁手続き 港湾契約無効

ワールド

エヌビディアAI半導体、中国向け販売停滞 米国家安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中