最新記事

中東

コバニ奪還で揺らぐ「イスラム国」の支配

2015年1月28日(水)17時33分
リチャード・ホール

青空から来た救世主

 他の多くの都市同様、コバニの陥落は目前に迫っていた。クルド人部隊が、迫りくる敵の包囲網と攻防戦を繰り広げていたその時、晴れ渡った青空から救世主が現れた。

 9月23日、ISISの侵攻を阻止するため、米軍が拠点の空爆を開始したのだ。

 コバニは最大の目標だった。コバニとその周辺地域には、連日6回程度の空爆が行われた。

 空爆の助けを得て、コバニの防衛隊は一進一退を繰り返しながら、徐々に街を取り戻していった。

 米中央軍は今週、反撃部隊がコバニの街の90%を掌握している、と慎重にコメントした。

 シリアのクルド系最大の政治団体、民主統一党(PYD)の外交委員アラン・セモによれば、コバニの防衛隊にとっては空爆が「生死を分ける」ものだった。「先週の集中的な空爆が大きな効果をあげた」と、セモは話している。

 防衛隊のもう1つの勝因は、有志連合と地上部隊との密接な連携だ。これはおそらく他のケースでも教訓になるだろう。

 しかし空爆がどれだけ重要な役割を果たしたとしても、地上部隊に今回の勝者が誰かをたずねれば、誰もが「クルド人」と答えるだろう。

 コバニをはじめISISの攻撃に晒されたクルド系の地域の人々は、近年では例を見ない「団結」を見せた。

 コバニ、シンジャールといったシリアのクルド地域の防衛戦には、国籍や政治信条を越えてクルド人兵士が結集した。

 シリアの防衛戦に参加したトルコのクルド系政党、クルディスタン労働者党の軍司令官セミル・バイクは、ISISの攻撃がクルド系の団結を促したと話している。「巨大な脅威ではあったが、同時に図らずも我々を団結させた。様々な違いを残り越えて、すべてのクルド系が結集した」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中