最新記事

ロシア

ガスプロムの脅しは怖くない

ウクライナへのガス供給停止をほのめかすが、その脅しは口先だけ?

2014年3月11日(火)18時25分
デービッド・カシ

生命線 ガスプロムが傾けばロシアも傾く(モスクワの本社) Sergei Karpukhin-Reuters

 ロシアの国営ガス会社、ガスプロムのアレクセイ・ミレルCEOは先週、ウクライナへの天然ガス供給を削減するかもしれないと警告した。そして数日後には、ガス価格を約37%上げることになるだろうと会社幹部が発言した。

 そうなれば、ロシアにエネルギーを依存するウクライナの4〜6月のガス価格は1000立方メートルあたり268・5ドルから368・5ドルに上昇するだろうと、ウクライナのエネルギー相、ユーリ・プロダンは語った。

 ガスプロムの脅しの根拠は、ウクライナの料金滞納だ。ウクライナのビクトル・ヤヌチェンコ前大統領が2月末にロシアに逃れて以降、ガス料金の滞納は20億ドルに膨らんでいると、ガスプロムは主張する。ウクライナが滞納分を払わなければ、09年と同じことになると、ミレルは言う。09年1月、ガスプロムは料金未払いと価格交渉の決裂を理由に、2週間ほどウクライナへのガス供給を停止したのだ。

 ウクライナ南部のクリミア自治共和国にロシア軍部隊が展開するなか、ガスプロムの脅しにもウクライナ政府は沈黙を貫いている。

 ヤヌコビッチは昨年12月、ロシアと150億ドルの財政支援で合意したが、それには天然ガス価格の30%引き下げも含まれていた。多くのウクライナ人がこの支援を、EU(欧州連合)加盟の前段となる連合協定の締結をやめたことへの見返りと考えた。ヤヌコビッチなき今、ロシアのプーチン大統領はこの値下げ措置を4月から撤廃する方針を打ち出している。

EUからの供給でしのぐ?

 だが、ロシアの脅しは口先だけだろうと考えるエネルギー安全保障の専門家もいる。ガス供給を削減したら、ロシアもガス収入を失うからだ。従ってロシアはウクライナとの融和姿勢に出るだろうと見る向きもある。

 ガスの供給が止まったり、両国間の緊張が激化したら、ガスプロムは200億ドルの損失を受け、ロシアは60億ドル相当の関税を失うことになる。そうなればガスプロムは破綻するだろうと、コンサルティング会社「東欧ガス分析」の責任者ミハイル・コルチェムキンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国11月鉱工業生産・小売売上高、1年超ぶり低い伸

ビジネス

防衛費増額、生産体制など国の要請に基づき対応=三菱

ワールド

焦点:ニューサム氏ら民主党有力州知事、「反トランプ

ワールド

チリ大統領選で右派カスト氏勝利、不法移民追放など掲
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中