最新記事

話題作

『ハリポタ』作家の新作は陳腐なメロドラマ?

先週発売されたJ・K・ローリングの大人向け小説にはセックスや暴力が満載。「魔法」を失った失敗作と酷評する声も

2012年10月1日(月)16時33分
ジェニファー・マットソン

大きな期待 ローリングの新作『ザ・カジュアル・ベイカンシー』は発売前から100万冊もの予約を記録 Paul Hackett-Reuters

『ハリー・ポッター』シリーズを生んだ小説家J・K・ローリングは先週、待望の新作『ザ・カジュアル・ベイカンシー(原題:The Casual Vacancy)』を世に送り出した。世界的な大ブームを巻き起こしたパリポタ・シリーズとは違って、初の大人向け作品となるこの新作は、まったくの未知数と言っていい。

 今のところ、メディアや読者の評価は分かれている。「冒険心がない」「希望がない」といった酷評から、「素晴らしい」と絶賛するものまで、さまざまな声が入り乱れている。

「大人の世界がどういうものか熟知した読者向け」だと、CNNは評した。「作者は田舎町における駆け引きや見栄、社会の不平等といった題材を掘り下げる。さらにセックスや虐待、湯水のようにあふれる暴言のおまけ付きだ」

 今回の作品の舞台は、パグフォードというイギリスの架空の田舎町。ある教区会のメンバーの突然の死をきっかけに、政治的かつ人間的な転落劇が繰り広げられる。

 ニューヨーク・タイムズ紙の文芸評論家カクタニ・ミチコは、「昔ながらのドロドロしたメロドラマのようだ」と厳しい評価を下した。「この小説には(パリポタ・シリーズのような)魔法の世界は登場しない。私たちはあの世界から、これ以上は無理というほど遠くへ追いやられてしまったようだ」

 作品中には墓場でのセックスシーンや、使用済みコンドームについてのグロテスクな描写、衝撃的な家庭内暴力シーンもあるという。「残念ながら、彼女が描いた現実世界はこれ見よがしなほど陳腐で、悲しくなるほど月並みだった。この作品には期待を裏切られただけではない。はっきり言って、つまらない」

『ハリポタ』続編の可能性は

 当のローリングはBBCに対して、「この物語は突然ひらめいた。理屈抜きに何かを始めたくなることってあるでしょ。そういう衝動に近かった」と語っている。これまでの作品とはまったく違うので、ファンは気に入らないかもしれないとも釘を刺した。

 ハリポタ・シリーズの続編はあり得るのかというお決まりの質問に対しては、「胸に手を当てて誓う。死ぬほど書きたいって気持ちにならない限り、続編は絶対にあり得ない」と答えた。「あのシリーズの中には、あと1年費やす必要があると分かっていながら出したものもある。急いで書かなければならなくて、厳しい仕事だった。あのシリーズの『ディレクターズ・カット版』ならあり得るかもね。まだ分からないけど」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中