最新記事

考古学

中国に現る!最強の恐竜ハンター

2012年1月6日(金)16時53分
ローレン・ヒルガース(ジャーナリスト)

古大陸の謎を解くカギ

 化石の採掘場は龍骨澗(竜の骨の村)という村の郊外にある。この周辺では何百年も前から化石が見つかっていた。

 この採掘場は規模が大きいだけでなく、埋まっている骨の量も多い。「なぜ(恐竜の)化石がこれほど多く集まっているのか、私には見当もつかない」と、ドッドソンは言う。

 その理由はまだ謎のままだ。徐は地滑りが恐竜たちを押しつぶし、骨を散乱させたとみている。ホーンは恐竜の死後、大規模な洪水か泥流によって骨がここに運ばれたと考えている。

 諸城市の主発掘溝には、ハドロサウルスの化石が大量にあった。だが研究者を興奮させているのは、採掘場全体にまばらに埋まっているチューチョンティラヌス・マグヌスの骨だ。

 完全な骨格はまだ未発見だが、最も重要な上あごの骨は見つかっている。「ティラノサウルス類は上あごの骨に明確な特徴がある。この化石は(北米の)ティラノサウルス・レックスに極めて近い」と、ホーンは言う。

 大型の角竜シノケラトプスもアジアで初めて見つかった。北米で発見された恐竜の多くがアジアでも見つかっていることから、両者は白亜紀後期には陸続きだったと考えられているが、アジアで大型角竜の化石が発見されないことがこの説の弱点になっていた。だが、シノケラトプスの発見で問題は解決されたと、徐は言う。

 この発見は、今後さらに多くの恐竜が見つかる可能性が高いことを示している。「極めてよく似た種が両大陸にいる。その1つが見つかったのだから、ほかの種も見つかるはずだ」と、ホーンは言う。

 諸城市の発掘溝を歩く徐は、これからも多くの発見が続くと確信している。まだ名前が付いていない恐竜の化石の前で足を止めた。岩の中から骨格が突き出ている。「こいつはとても奇妙な恐竜だ」と、彼はうれしそうに言う。「科学者はいつだってとんでもなく奇妙な恐竜を見つけたくてたまらないんだ」

[2011年9月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、米の入国禁止令を非難 「底深い敵意示してい

ワールド

エルサルバドルに誤送還の男が米に帰国、不法移民移送

ワールド

米連邦高裁、AP通信への取材制限認める 連邦地裁判

ビジネス

中国外貨準備、5月末時点で3.285兆ドル 予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっしり...「これ何?」と写真投稿、正体が判明
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中