最新記事

米大統領選

ロムニーに投票した88%は白人だった

ロムニー敗北の最大の原因は、アメリカの現実である黒人やラテン系、アジア系を軽視した政治姿勢にある

2012年11月8日(木)18時36分
トム・スコッカ

敗軍の将 敗北を認めて支持者にあいさつするロムニー夫妻(7日、ボストン) Eric Thayer-Reuters

 結局、共和党のロムニーに「人種バブル」は起きなかった。6日に投開票された米大統領選の出口調査結果によれば、ロムニーは白人票の59%を獲得した。目標とした60%に若干届かなかったものの、上々の出来だ。ただ白人票を60%獲得したとしても、一般投票数で勝利はできなかっただろう。

 その理由はこれまで通り、共和党支持者に人種的な広がりがなかったからだ。極論すれば、ロムニーに投票したのは白人だけだった。

 もちろん、すべてが白人だったというわけではない。ただロムニーの得票率は48・1%で、そのうち白人は42・5%。つまり、彼に投票した人の88%は白人だった。ちなみに黒人は2%、ラテン系は6%、アジア系は2%、そしてほかの人種はすべて合わせても2%だ。

 一方、オバマに投票した有権者の内訳は白人が56%、黒人が24%、ラテン系が14%、アジア系は4%。その他の人種は2%だった。

 白人が支配的な政治メディアは最後まで、ロムニーが限られた人種にしか支持されていないことから目をそむけていた。今やアメリカの現実とかなりずれている白人有権者層が、一般的な政治状況を反映していると勘違いしていた。だからこそ、選挙戦の最終週にニューヨーク・タイムズ紙はペンシルベニア州から次のようにリポートした。


 確かな手ごたえがある――郊外の富裕層地域の邸宅に掲げられたロムニー支持の看板や、空いた時間にロムニーへの投票を呼びかける電話をかける共和党支持者の母親たちの興奮した声が示すのは、選挙戦の流れが今やロムニーに傾いているということだ。


 だが、実際にはペンシルバニア州はオバマが5ポイント差で制した。

 白人の「分離主義」は、オバマ支持者を分裂させるのにも不十分だった。オバマへの支持はかなり広範囲で、もし白人のオバマとロムニーの支持が50%と50%だったら、オバマは総得票の58%を獲得していた可能性がある。

 米FOXニュースのキャスターであるビル・オライリーは我慢できなかったのだろう。出口調査と開票速報でロムニーの敗北が分かると、人種差別的な偏見をあらわにした。


 アメリカはもはや伝統的なアメリカではない。50%のアメリカの有権者は、とにかく物をほしがっている。物がほしいのだ。彼らに物を与えるのは誰か? オバマだ。オバマはそれ分かっていて、乗じたのだ。

 20年前なら、オバマはロムニーのような立派な候補者によって完全に打ち負かされていただろう。白人の権力者層は今や少数派になってしまった。そして有権者の多くが今の経済システムは自分たちにとって不公平で、とにかく物をほしいと感じている。


 白人の権力者層は、さまざまな肌の色をした物欲まみれの人々によってバラバラにさせられたと言いたいらしい。白人層が広がらなかったため勝てなかったと認めたにも関わらず、オライリーはオバマの支持者を同じアメリカ人だとは見ずに、画一的な反対勢力だと捉えているわけだ。

 オバマはラテン系有権者の71%を(ロムニーは27%)、アジア系有権者の73%を(ロムニーは26%)をそれぞれ獲得した。こうした有権者は、ロムニー側にとってすべて同じに見えた。それこそが彼らの敗因だ。

© 2012, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中