最新記事

SNS

プライバシーは死んでいる

2011年1月18日(火)15時12分
ジェシカ・ベネット

「大半の人は、ネットでは匿名性が守られるという幻想を抱き続けている」と、『ネット・バカ──インターネットがわたしたちの脳にしていること』(邦訳・青土社)などの著書があるジャーナリストのニコラス・カーは言う。実際には「ネットユーザーが取る行動はことごとく情報として収集され、データベースに蓄積される」。

 ネット上に出回る情報で──しかもその情報が正しいという保証はない──人間がランク付けされる時代が来ると、テクノロジー専門家たちは警告する。詳細な個人情報がネット上に公開されれば、あなたの社会的評価はどう変わるだろう? 会社で昇給の交渉をしたり、金融機関でローンの申し込みをする際にどんな影響があるだろう?

すべては企業の良心次第

 恐るべき未来? いや違う。これは既に起きていることだ。09年、カナダのケベック州に住む女性が鬱病で職場を休み、保険会社から疾病給付金を受け取っていた。しかし、あるとき保険金の支払いを打ち切られた。フェースブックの個人ページに掲載された写真で楽しそうに見えた、というのが打ち切りの理由だった。

 保険会社だけではない。クレジットカード会社もローン審査にSNSを利用している。

 ウェブサイト運営者は、あなたのコンピューターに追跡用ファイル「クッキー」を送り込む権利を手にしている。それを通じてサイト運営者は、あなたの嗜好や後ろめたい趣味などあらゆる情報を手に入れる。

 その情報をどう扱うかは、それぞれの企業の判断に委ねられている。個人情報の金鉱脈を手にしているフェースブックのような企業にとって、その情報を社内にしまい込んでおきたい理由はほとんどない。

「情報を欲しがるのは大企業ばかりではない」と、レピュテーションディフェンダーのマイケル・ファーティクCEOは言う。「究極的には、あなたが関わりを持つすべての人があなたの個人情報を手に入れようとする」
しかも、事実無根の情報や不完全な情報まで第三者に入手され、その情報に基づいて評価を下されてしまうのだ。

[2010年11月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中