最新記事

アフガニスタン戦略

増派決断の遅れはオバマの命取りに

アフガニスタンへの増派要請に二の足を踏むオバマ。このままではブッシュがイラクで犯した失敗を繰り返すことになりかねない

2009年10月9日(金)17時11分
ホリー・ベイリー(ホワイトハウス担当)

悪化する戦況 アフガニスタン東部ロガール州の基地からパトロールへ向かう米軍兵士 Nikola Solic-Reuters

 アフガニスタン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル司令官が増派を求める戦況報告書をホワイトハウスに提出したのが8月。そのとき政府高官たちの頭に浮かんだのは、バラク・オバマ大統領が増派を決断するまでにどれくらいの時間がかかるかだった。

「数週間」とロバート・ギブス報道官は報道陣に語った。決定の「緊急性や切迫さがあるわけではない」とギブスは言う。以来ホワイトハウスは、オバマにはマクリスタルの報告書を吟味し、オプションを考える時間が必要だと繰り返してきた。

 それから1ケ月、オバマは今も考え込んでいる。10月7日には3回目のアフガニスタン戦略協議(全5回)がホワイトハウスの緊急司令室で開催された。ジョー・バイデン副大統領、ロバート・ゲーツ国防長官、ヒラリー・クリントン国務長官らが出席し、クリスタル司令官もビデオ経由で参加した。

 政府は相変わらず、決定にはさらに「数週間」かかるとしている。だが実際に大統領に残されている時間はどれくらいあるのか。

 先週末、ジェームズ・ジョーンズ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はCNNテレビに対し、時間は大統領に味方していると明言した。「アフガニスタンに失敗の危険が差し迫っているわけではない」とジョーンズは語っている。

 ジョーンズの言葉は正しいかもしれない。だが米議会や市民からは、ホワイトハウスに真剣な取り組みを求める圧力が高まっている。この状況は、約3年前にジョージ・W・ブッシュ前大統領が対イラク戦争の見直しを検討していたときと酷似している。

増える犠牲と高まる反戦ムード

 戦争での犠牲者が増えるにつれ、国民の不安は増す。現地の情勢が悪化する中で戦略の見直しが行われている点も、イラク戦争と同じだ。

 今年8月の駐留米軍の犠牲者は、8年前にアフガニスタン戦争が始まって以来最多となった。9月に入っても、テレビのニュースは悪化するアフガニスタン情勢でもちきりだった。全国的なメディアだけがアフガニスタン問題に関心を寄せているわけではない。地方紙は犠牲となった兵士の写真を1面に飾り続けている。

 10月4日にはジョーンズ報道官が討論番組に出演しているさなか、コロラド州フォート・カーソン陸軍基地から派兵された8人の兵士が、アフガニスタン東部で不意打ち攻撃によって命を落とした。コロラド・スプリングス・ガゼット紙によれば、同基地にとってベトナム戦争以来最悪の犠牲だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

ロシア黒海主要港にウクライナ攻撃、石油輸出停止 世

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は

ワールド

中国、日本への渡航自粛呼びかけ 高市首相の台湾巡る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新作のティザー予告編に映るウッディの姿に「疑問の声」続出
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中