海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
内陸国のモンゴルでも大きな成果
国際展開にも積極的だ。カンボジアではJICA支援のもと、海から100キロ離れたタケオ村で、オニテナガエビの種苗生産施設を設置。太陽光発電を活用し、10年以上たった今でも現地の農家の貴重な収入源となっている。
内陸国のモンゴルでは、土木・橋梁工事を手掛けるKITAGAWA株式会社との連携により、極寒地に設置した養殖施設で、火力発電所の熱を活用しながら交雑ハタを育成。平均成長率は10カ月の飼育期間で約1キロに達し、高密度養殖で大きな成果を挙げている。
ここで養殖された魚は、現地レストランや在モンゴル日本大使館をはじめとした各国の政府機関などに出荷されているという。
さらに注目すべきは、養殖と植物栽培を組み合わせたアクアポニックス(循環型農法)への応用である。魚の排出物を栄養源として野菜や果物を育てるこの循環型農法により、山村地域で「農漁者」を育成するという新しい地方創生のビジョンが動き出している。淡水が通例のアクアポニックスで海水魚と野菜の組み合わせは世界初である。

しかし、山本氏はこの技術を地球にとどめておくつもりはないようだ。「2030年代には月面での宇宙養殖実験を実現したい」と山本氏は語る。
すでに微小重力下での孵化や摂餌実験も行っており、完全閉鎖循環方式という特性は宇宙空間での食糧生産にも適している。資源に乏しい環境でも稼働するこの技術は、未来の人類の生存基盤となる可能性を秘める。
水と電気さえあれば、地球はもちろん、地球の外でも魚が育つ。「好適環境水」で養殖された魚が世界の食糧問題の解決の一助になる日は、そう遠くないのかもしれない。
アンケート
どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。
アマゾンに飛びます
2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら





