注目のキーワード
トランプ
投資
文字サイズ

最新記事

在日外国人

ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(2/3)

Story of a Chinese Woman Living in Japan, Part. 2

印刷

 私たちの保育園が開園し、その結果は上々でした。子どもは方々からやってきて、場所は東京でしたが、川崎、横浜、名古屋から、最も遠いところでは広島から来た子もいました。いずれも中国人です。経費がなく広告掲載もしませんでしたが、当初はママからママへの紹介で広まりました。預かる子どもは5人からスタートし、半年足らずで20人以上に増えました。その上、24時間対応です。みんな遠方からですし、ママたちは働かなければならず、毎日の送り迎えは不可能です。そこで平日は子どもをこちらに預けて、金曜夜に迎えにくると日曜夜にまた送り届ける、というスタイルが一般的でした。

 初めのころ保育費は安く、食費・宿泊費込みで1カ月1人あたり6万円でした。さらに経験豊かな保育士を招いて、子どもたちにたくさんのことを教えました。私1人では20人以上も見られませんし、夜、1人になるのも怖いので、中国人のヘルパーさんを雇いました。こうして3人態勢で子どもを見るようになりました。彼女たち2人の給料は、計40万円余り。さらに光熱費や家賃を引いて、最後に残ったのが私自身の給料でした。収入を得るとは思ってもみなかったので、それだけでもう満足でした。ママたちが子どもを迎えに来たときのうれしそうな表情を見ると、自分がやっていることは意義があると思ったものです。

看板を掲げると区役所がやってきた

 保育園は当初、親から親へと口コミで広まったため、宣伝は不要でした。その後、ママたちから「場所がわかりにくい」といわれ、多くの場合は駅まで迎えに行きました。時間もかかるし、先生もそうしょっちゅう迎えには行かれません。先生が1人減ると、子どもたちのリスクが増えます。そこで保育園のある2階の窓の上に、看板を掲げようと考えました。どんな名前にしようか。「愛嬰保育園」〔現・愛嬰幼保学園〕にしよう。子どもは宝、子どもを愛するべきでしょう......。

 こうして、愛嬰保育園の看板が掲げられました。結果、区役所の人がやってきて、開口一番にいいました。「この保育園には認可証がありますか? ないなら閉鎖です」。日本には規定があり、認可保育施設を開く場合、国や地方自治体の設置基準に則していなければなりません。

 基準を見てみると、私たちの保育園は1つも適合していなかった。保育園を開設するには、まず東京都福祉保健局での事前説明会へ行き、それから設置認可にかかわる申請書を用意します。さらに計画書を作成し、提出するときには保育園の設備図面を添付しなければなりません。子どもや資格を持つ保育士の数、トイレや調理室、子どもの数に応じた保育室のスペースの確保なども定められています。給食や宿泊を含む場合は、食品衛生法に基づく許可や栄養士・調理師の確保も必要です。いずれにせよ規定は膨大な量でした。どうしたらいいのでしょう。

 区役所の人にいいました。「すでに子どもを受け入れてしまい、保育費も納めてもらった。急に『くるな』とはいえません。もう開園して先生も雇ったのに、すぐ解雇するわけにもいかない。あの人たちにも生活があるのですから!」。それで区役所の人はこういいました。「こちらは特殊なケースです。あなたは外国人ですし、当区の規定も知らなかった。ではこうしましょう。1年間の改善期間を与えますので、期限までに必ず基準に適合するようにしてください。来年のいまごろ、抜き打ち審査にうかがいます。それから納税もしてもらいますよ。脱税は違法ですから」

今、あなたにオススメ

最新ニュース

ワールド

ペルー大統領、フジモリ氏に恩赦 健康悪化理由に

2017.12.25

ビジネス

前場の日経平均は小反落、クリスマス休暇で動意薄

2017.12.25

ビジネス

正午のドルは113円前半、参加者少なく動意に乏しい

2017.12.25

ビジネス

中国、来年のM2伸び率目標を過去最低水準に設定へ=現地紙

2017.12.25

新着

ここまで来た AI医療

癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由

2018.11.14
中東

それでも「アラブの春」は終わっていない

2018.11.14
日中関係

安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録

2018.11.14
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2025.5. 6号(4/30発売)

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

2025.5. 6号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

Introduction AI時代に国際ニュースを英語で読む
【AMERICAS】
アメリカ 絶好調のトランプとアメリカ国民の蜜月が続くヤバさ
中南米 米中ロが攻防を繰り広げる世界の大国の「チェス盤」
【EUROPE】
ロシア 100年の恨み噴き出す戦争に終わりは見えず
ウクライナ 反骨の男ゼレンスキーをトランプ禍が悩ます
イギリス 欧州のリーダーとしていま浮上する不思議
ドイツ 財政均衡の呪縛を脱し政治経済立て直しへ
ヨーロッパ 不安の時代に流動化する欧州大陸
【ASIA】
中国 老いゆく経済大国にくすぶる火種
日本 トランプ時代に試される石破の「脱安倍」外交
韓国 ダイナミックで不安定 現状変更が好きな国
北朝鮮 貧困と孤立から脱皮へ 知られざる大変化
インド 世界一の人口大国に経済覇権の夢あり
【MIDDLE EAST & AFRICA】
イスラエル/パレスチナ 終わりなき混沌の歴史をひもとく
サウジアラビア 米中ロとわたり合う全方位外交の狙い
イラン 国内締め付けと核開発 ハメネイに迫る決断の時
中東・アフリカ 今も終わらないイスラム国の脅威
デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

MAGAZINE

特集:静かな戦争

2017-12・26号(12/19発売)

電磁パルス攻撃、音響兵器、細菌感染モスキート......。日常生活に入り込み壊滅的ダメージを与える見えない新兵器

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版

ニューストピックス

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース