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意外にも名古屋の名物老舗喫茶はやっていない 愛知の「過剰おもてなし」モーニングセットの謎を追う

2023年2月27日(月)12時40分
大竹敏之(ライター) *PRESIDENT Onlineからの転載

あえてモーニングをしない喫茶の言い分

名古屋では1960年代に始まったモーニングサービス。この時代性を裏づけるのが名古屋屈指の老舗喫茶である「コンパル」のモーニングです。

1947(昭和22)年創業で名古屋市内に9店舗を出店するコンパルは、ボリューム満点のエビフライサンドでも知られる名物喫茶。

観光客の利用も少なくありませんが、同店には無料のモーニングサービスはありません。ハムエッグトーストがつくモーニングセットはありますが、ドリンク代に130円の追加料金が必要です。名古屋の名物老舗喫茶には、名古屋喫茶の名物"モーニングサービス"はないのです。

その理由を2代目の若田秀晴さんはこう説明します。「先代の父からしたら、"あれは後からできた新しい店が始めたサービス"という感覚だったんじゃないでしょうか。おいしいコーヒーを出すことが一番のサービス、と考えていましたから。うちではおつまみのピーナッツもありませんしね」。

「間違いだらけの名古屋めし」コンパルは昭和40年代前半までに市内中心部に5店舗を出店。昭和37~38年頃には名古屋の喫茶店の中ではいち早くサンドイッチのテイクアウトを始め、現在にいたるまで看板メニューとして人気を獲得しています。

先の新聞記事が出た昭和40年当時、既に開業して20年近い歴史があった同店にとっては、モーニングは新興店の客引きサービスと映ったのでしょう。

とはいえ、名古屋喫茶では60年近くも前からモーニングサービスの導入が盛んになっていたことは、当時の文献や老舗の証言からも明らか。一宮市や豊橋市にやや遅れて始まり、それでもまたたく間に市中に広まったことはまぎれもない事実なのです。

大竹敏之

ライター
1965年、愛知県常滑市出身。出版社勤務を経て26歳でフリーに。2010年刊行の『名古屋の喫茶店』(リベラル社)がご当地ロングセラーとなり、以後コンスタントに名古屋の食や文化に関する書籍を出版。Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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