鬼才が描く「家族のしがらみ」...カンヌ金賞の映画『センチメンタル・バリュー』には「あの映画」のオマージュも
Trier’s New Masterwork
昔の絵本に出てきそうな戸建ての家にはもちろん素敵な思い出が詰まっているが、同時にたくさんの苦しみも染み込んでいる。
それは複数の回想シーンをつなぎ合わせたモンタージュによって示され、ボルグ家の4世代にわたる歴史を駆け足でたどった後、ノーラと妹アグネス(インガ・イブスドッテル・リッレオース)が両親の壮絶な口論を壁越しに聞く悲しいシーンに行き着く。
父グスタフ(ステラン・スカルスガルド)は高名な映画監督だが、まだ娘たちが幼いうちに家族を捨てて家を出て、スウェーデンに移り住んでいた。当然のことながら娘たちとの間には距離ができる。とりわけノーラは、父の身勝手を許せずにいた。
ところが姉妹の母親が亡くなった後、70歳になったグスタフが突然戻ってくる。もちろん娘たちとの関係修復を望んでのことだが、別な思惑もあった。自身15年ぶりの新作となる自伝的映画の主役に、ノーラを起用することだ。
近所のカフェで、グスタフはノーラにこの話を持ちかける。だがノーラはきっぱりと拒絶し、今までろくに私の舞台を見たこともないでしょ、と父を非難する。ここは本作でも最高に痛いシーンの1つだ。父は映画、娘は舞台。2人はそれぞれの表現手段にこだわり、アーティストとしての互いのエゴをぶつけ合う。
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