最新記事

世界経済

再上昇する原油価格、歯止めかからず OPEC関係者「100ドル突破もあり得る」

2022年1月19日(水)16時55分

国際エネルギー機関(IEA)の統計によると、昨年11月のOPECプラスの生産量は目標を日量65万バレル下回った。

ロシアのプーチン大統領は昨年10月、原油が100ドルに達してもおかしくないと発言。OPECプラスの指導者の1人として異例の具体的な価格予想を示した。

ゴールドマン・サックスは18日、北海ブレントが年内に100ドルを超える態勢にあるとの見方を明らかにした。

高まる熱気

OPECプラスの生産能力の制約は、石油生産業界全体が抱える問題の一角にすぎない。業界はコロナ禍による投資不足に苦しめられている。また欧州の石油大手企業は、クリーンエネルギーに軸足を移すよう迫られ、石油開発プロジェクトの投資を減らしつつある。

その結果、大幅な増産余力を持つのはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラクといったごく少数の有力産油国だけになった。イランは日量100万バレル分の増産が可能とはいえ、米国の制裁発動のため少なくとも当面は市場から閉め出されている。

別のOPEC高官は、幾つかの供給面の支障としっかりした需要が原油高を引っ張っていると指摘。「市場の熱気が高まっている」と述べ、100ドル台に乗せるかどうかは分からないものの「供給不足が続けば、数カ月内に新型コロナウイルスが再び需要に打撃を与えない限り、価格は上昇していく」と言い切った。

需要打撃する懸念も

OPECとOPECプラスは、価格上昇のおかげで20年に急減した石油収入を取り戻すことができる。それでも一部の関係者は、あまりの高値には不安をのぞかせている。

あるOPECプラスの高官は「この水準では需要にリスクをもたらす。個人的な見方では、1バレル=85ドルを長期間上回るのは好ましくない。持続的な需要が伸びるにはいささか高い」と話した。同高官は、ジェット燃料の需要がパンデミック前の水準を下回っている間は、原油が100ドルになることはないと見込んだ。

(Alex Lawler記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア総選挙、与党ANCの支持率42% 一時の勢い失

ワールド

ブラジルCPI、5月中旬の前月比伸びは予想下回る 

ワールド

ローマ教皇が異例の謝罪、同性愛者に差別的表現

ワールド

イスラエルのラファ作戦は「大規模」でない、米高官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 8

    なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中