最新記事

東南アジア

経済減速ベトナムがアジアのギリシャに?

ついに陰りが見え始めたベトナム経済が中国と共倒れになれば、東南アジア全体に及ぼす打撃は計り知れない

2012年10月15日(月)16時35分
ルーク・ハント

不穏な兆し ベトナムの不動産価格は2分の1に下落 Kham-Reurters

 ベトナム経済の行方に暗雲が垂れ込めている。銀行の取り付け騒ぎが噂されたかと思えば、汚職容疑で政府高官が逮捕され、着実に伸びていた経済成長にも陰りが見える。さらに政府が国際機関の支援を求めているという臆測まで飛び出した。

 ベトナム政府が銀行の不良債権問題でIMF(国際通貨基金)に救済を求める可能性に言及したのは、国会の経済委員会だ。中央銀行のレー・ミン・フン副総裁がすぐにそれを否定したが、可能性が取り沙汰されただけでも注目に値する。財政赤字の是正と景気回復に必要な措置を早急に講じるべきだと、政府に対する圧力が高まっていることを意味するからだ。

 地域の大国、中国の財政も非常に不安定な状態にあると指摘する専門家もいる。中国の財政が枯渇し、ベトナムが景気後退に向かっているとなれば、東南アジア諸国に対する影響は計り知れない。

 東南アジア各国の経済は、世界金融危機が発生した08年以降も、その荒波をものともせずに成長を遂げてきた。だがその躍進を支えてきた中国とベトナムが共倒れになれば大問題だ。

国外からの投資は3分の1も減少

 ASEAN自由貿易地域の関税撤廃によって、加盟10カ国間の貿易は飛躍的に伸びた。加えて、中国による投資と資金援助(特に対カンボジア)は、ASEAN地域の景気の見通しを明るいものにしてきた。

 しかし国単位でいえば、マレーシアやタイ、フィリピン、インドネシアなどの経済は不安定な傾向を示している。経済成長は鈍く、債務が増え、規制撤廃による地域的な恩恵はもはや見込めない。かといって、ヨーロッパや日本、中国などの貿易相手国がすぐに好況を迎えるとも思えない。

 ベトナムが「東南アジアのギリシャ」になると断言するのは時期尚早だろう。政府と国民の性質はギリシャとはかなり異なるし、インフレは抑制されて為替レートも安定している。

 とはいえベトナムの不動産価格は2分の1に下落し、国外からの投資は3分の1も減少した。向こう2年間の成長率の見通しは5%台だが、発展を目指す途上国にとっては微々たる数字だ。

 ベトナム経済の不安は隣国のカンボジアやラオスにも悪影響を及ぼす。そして先行きの不透明感が急速に問題になりつつある東南アジア経済全体にも波及するだろう。

From the-diplomat.com

[2012年9月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、イラン指導者殺害や体制転換の扇動「容認で

ワールド

OPECプラス8カ国、4月に増産開始で合意 イラン

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

プーチン氏、ハメネイ師殺害は道徳規範と国際法に違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 5
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 6
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 9
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 10
    最高指導者ハメネイ師死亡(イラン発表)、トランプ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中