コラム

イチロー3000本安打がアメリカで絶賛される理由

2016年08月09日(火)15時00分

 4点目は、その俊敏なプレースタイルを42歳の現在まで維持していることです。30代の後半で急速に力が落ちる選手が続出する中、イチロー選手は走力にしても、肩の力にしても、そして何よりも引き締まった体型の維持ということではまったく衰えを感じさせません。そのことは、まさにマッティングリー監督が言うように「単なる記録以上の意味がある」わけで、多くの野球ファンはそのことを良く知って賞賛しているのです。

 そして5点目に、この「メジャー3000本」に先立って、「日米通算4257本」を打って「ピート・ローズを超えた」際に、「日米通算の数字に意味があるのか?」という論争がありました。それも微妙に影響しています。そのときイチロー選手自身が、「ローズ選手に祝福してもらえないなら通算した数字には意味がない」と語ったのは、アメリカでは非常に有名になっていて、好感をもって受け止められています。

 そのために、今回の「3000本」に関する報道では、上記のニューヨーク・タイムズもそうですが、「本人は通算に意味はないと言っているが」と断ったうえで、「実は日米通算ではとっくにローズを超えた前人未到の領域にいる」と説明されています。自らは誇らなかったゆえに反対にメディアが勝手に通算成績も参考記録として拡散してくれている、というわけです。

 このように、今回の記録がアメリカで極めて高い評価を受けていることは、揺るぎない事実です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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