Picture Power

紛争が生んだ母子の肖像 写真展「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」

Intended Consequences

Photographs by Jonathan Torgovinik

バレンタインと娘アメリー、アイネス 「私は妊娠2ヶ月で民兵のリーダーに毎晩暴行された。コンゴの難民キャンプで娘を長女(後方)を産んだ後にさんざん暴行されてまた妊娠した。長女のほうを愛している。なぜならこの子は夫との愛の結果として生まれた子だから。しかし次女に罪なないということをゆっくり理解し始めている」

「息子に愛を感じたことはない」
肩を抱き手を取り合う母子の美しいポートレートは、凍てつく緊張感にあふれる。

 1994年、中央アフリカの小国ルワンダでは、フツ族の大統領暗殺をきっかけに少数派のツチ族狩りと無差別の虐殺が始まり、100日間で80万人といわれる大量殺戮が起こった。女性たちは家族や親族を殺されたあげくに連れ去られ、繰り返し性的暴行を受け妊娠して新たな命を産んだ。母は「敵の子」の親としてコミュニティから疎まれ、HIV(エイズウイルス)の感染がわかり「息子の父親が私にしたことを思い出すたびに、唯一の復讐は息子を殺すことだと思った」と語る。

 東京・銀座のニコンサロンで写真展「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」が開催されている(2月1日まで。大阪ニコンサロンでは3月24日〜4月6日まで)。本誌契約フォトグラファー ジョナサン・トーゴヴニクは2006年から3年間かけてルワンダを訪れ、母親たちの声に耳を傾けた。インタビューの後に写真撮影を行い「彼女たちが抱える幾重にも積まれたトラウマを写すように努めた」と言う。

 日本語版写真集の企画と翻訳を担当した写真批評家の竹内万里子 京都造形芸術大学准教授は「この作品は見た後にスッキリとわかった気になれるものではない」と話す。「記号のように現実を単純化して切り取り、見る人を理解した気にさせる多くの『わかりやすい』写真に抗い、写真を見てもわからない現実の複雑さに真摯に向き合っている」と語る。

 アフリカのIT立国を目指し発展著しいと伝えられるルワンダにあって、彼らの社会的孤立は今も変わらず、生活は厳しい。親子の絆の中に紛争が巣くい、年月を経てもなお片時の休みもなく続く見えない戦いが彼らの日常にある。

──編集部・片岡英子

 *写真展では展示のない写真がスライドショーに一部含まれています。
 *母子の名前は身元保護のため変更されています。

 Photographs by Jonathan Torgovinik

 ニコンサロン
 写真集『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』(赤々舎)
 ルワンダ財団(トーゴヴニクが写真プロジェクト終了後に設立)

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