Picture Power

タックスヘイブンの知られざる素顔

THE HEAVENS: ANNUAL REPORT

Photographs by PAOLO WOODS & GABRIELE GALIMBERTI

タックスヘイブンの知られざる素顔

THE HEAVENS: ANNUAL REPORT

Photographs by PAOLO WOODS & GABRIELE GALIMBERTI

<英領ケイマン諸島>首都ジョージタウンのあるグランドケイマン島では、新しいマリンスポーツ「ジェットパック」が楽しめる。背中に着けたモーターで海水を噴出させ、海面から飛び上がる仕組みだ(30分で359ドル)。運営するジェットパック・ケイマン社のオーナーは「ジェットパックは重力ゼロ。ケイマン諸島は税金ゼロ。ぴったりだ!」と話す

 企業や富裕層によるタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴いた「パナマ文書」が4月に公開されると、世界に衝撃が走った。各国の金融当局などによる調査も始まり、しばらく余波は続きそうだ。

 グローバル化とともに、租税回避地はひそかに世界へ浸透。今や国際貿易の半分以上が、オフショア金融や税逃れの象徴である同地を経由するといわれる。だが多くの人にとっては謎の世界で、思い描くのは「ヤシの木がある南国リゾート」だろう。

 では実際は? 写真家パオロ・ウッズとガブリエレ・ガリンベルティは13~15年に米デラウェア州や英王室属領ジャージー島、パナマ、シンガポールといった租税回避地を旅し、写真集『ヘブンズ――年次報告書』にまとめた。彼らには、形のないものに形を与えたいとの強い思いがあったという。さらに写真集と同名の会社ヘブンズをデラウェア州に設立。同州にはアップルやコカ・コーラ、グーグルなど28万5000社以上が登記上の本社を置いている。

 税を逃れた資金は、本来なら教育や医療、安全保障に使えたもの。この問題は公と私、企業と国家、持てる者と持たざる者の関係を私たちに問い直す。


撮影:パオロ・ウッズ&ガブリエレ・ガリンベルティ
ウッズは1970年生まれでカナダ人とオランダ人の両親を持ちイタリアで育つ。ガリンベルティは1977年イタリア生まれ。本作が含まれる共著の写真集『ヘブンズ――年次報告書』(英デウィ・ルイス社刊)がある

Photographs by Paolo Woods & Gabriele Galimberti-Institute

<本誌2016年5月31日号掲載>



【お知らせ】

『TEN YEARS OF PICTURE POWER 写真の力』

PPbook.jpg本誌に連載中の写真で世界を伝える「Picture Power」が、お陰様で連載10年を迎え1冊の本になりました。厳選した傑作25作品と、10年間に掲載した全482本の記録です。

スタンリー・グリーン/ ゲイリー・ナイト/パオロ・ペレグリン/本城直季/マーカス・ブリースデール/カイ・ウィーデンホッファー/クリス・ホンドロス/新井 卓/ティム・ヘザーリントン/リチャード・モス/岡原功祐/ゲーリー・コロナド/アリクサンドラ・ファツィーナ/ジム・ゴールドバーグ/Q・サカマキ/東川哲也/シャノン・ジェンセン/マーティン・ローマー/ギヨーム・エルボ/ジェローム・ディレイ/アンドルー・テスタ/パオロ・ウッズ/レアケ・ポッセルト/ダイナ・リトブスキー/ガイ・マーチン

新聞、ラジオ、写真誌などでも取り上げていただき、好評発売中です。


MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中