コラム

中国空母が太平洋に──トランプ大統領の誕生と中国海軍の行動の活発化

2016年12月27日(火)15時30分

 中国海軍は、南シナ海における米海軍の水中の情報収集を排除したいと考えて行動してきたし、どのような情報をどのような手段で採っているのかも知りたかったはずだ。それでも、公海において米海軍調査船の呼びかけを無視して米海軍の装備品を奪うなどという行為はなされなかった。やはり、特異な事象であると言える。

 中国は、東シナ海及び南シナ海において、これまでより一段と強い対米けん制行動に出ている。「台湾問題や南シナ海問題を取引材料にするな」という意味だ。中国の対米けん制の行動が強硬であるということは、それだけ、中国が「米国による中国発展の妨害」を恐れているということである。

 トランプ氏のディールによっては、米中間の軍事的緊張も高まることになるだろう。もし、小規模であっても、米中が実際に軍事衝突を起こすことがあるとすれば、そのきっかけは台湾かもしれない。トランプ氏あるいは米国の支持を得たと考えた蔡英文総統が、台湾独立の方向に動き始めたら、中国は軍事力を行使せざるを得なくなる。米国は、軍事力を用いて、これを押さえようとするだろう。しかし、今回は、中国が簡単に引き下がるとは考えにくい。1996年の台湾海峡危機がトラウマになっているからだ。

 トランプ氏は理想主義を掲げない分、何を要求しているのか分かりやすい。一方で、ディールをしている米中両国以外の国々は、その取引の内容を知ることが難しくなるだろう。何が取引に使われ、米中それぞれがどのような条件で取引を成立させるのか、日本を始めとする周辺諸国は、慎重に見極めてこれに対応していかなければ、十分な準備もないまま、米中軍事衝突に対応しなければならなくなるかもしれない。

プロフィール

小原凡司

笹川平和財団特任研究員・元駐中国防衛駐在官
1963年生まれ。1985年防衛大学校卒業、1998年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。安全保障情報を扱う「IHSジェーンズ」のアナリスト・ビジネスデベロップメントマネージャー、東京財団研究員などを経て、2017年6月から現職。近著『曲がり角に立つ中国:トランプ政権と日中関係のゆくえ』(NTT出版、共著者・日本エネルギー経済研究所豊田正和理事長)の他、『何が戦争を止めるのか』(ディスカバー・トゥエンティワン)、『中国の軍事戦略』(東洋経済新報社)、『中国軍の実態 習近平の野望と軍拡の脅威 Wedgeセレクション』(共著、ウェッジ)、『軍事大国・中国の正体』(徳間書店)など著書多数。

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