コラム

自転車シェアリングが中国で成功し、日本で失敗する理由

2017年09月13日(水)17時30分

つまり、1台あたりの年間利用回数はモバイクが2000回なのに対してドコモ・バイクシェアはたった220回である。モバイクの自転車の調達コストは1台1000~2300元(1万7000円~3万9000円)とみられている(駒形哲哉「シェアリング・エコノミーの中国的展開」『東亜』No.600, 2017年6月)が、ドコモの自転車のお値段はその2倍は下らないだろう。そんな高価な自転車を投入しても稼働回数が9分の1では、およそ勝負にならない。

まあそれもしょうがないだろう。モバイクをはじめ、中国の自転車シェアリング企業は儲けを出すつもりなのに対し、日本の自転車シェアリングは自治体が事業主体だからだ。ドコモ・バイクシェアは自治体から事業を請け負っているだけなので、そもそも利益を出そうという発想が生まれようがない。

儲けは出ないにしてもせめてもう少し利便性をよくしてもらいたいものである。モバイクの場合、中国のある都市で登録して、他の都市で利用することも可能である。日本の場合、同じドコモ・バイクシェアの運営であっても東京で登録した人が仙台で使うことはできず、改めて登録し直さなくてはならない。その際にユーザーIDを東京とは別のものにするように要求される。旅先でシェア自転車を使えたら楽しいかも、と思っても、またスマホを何十回とプチプチ押す手間を思うとその気持ちも萎えてしまう。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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