コラム

中高年もスマホで支払う中国、20年間もリニア実験中の日本

2017年07月12日(水)17時44分

stockstudioX-iStock.

<日本では政治家やエリートサラリーマンがガラケーを使っていても不思議ではないが、中国は違う。なぜ中国ではこれほど変化が早く、人々が新しい事物をどんどん受け入れているのだろうか>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

私は常に建設的な批評をするよう心がけている。日本に対しても中国に対しても、耳の痛いことを言い続ける頑固親父というポジションを守ろうと思っている。なかには両方に甘いことを言う二枚舌の輩もいるが、それではジャーナリズムは成り立たない。

というわけで、ついつい中国についても厳しい意見を書くことが多いのだが、もちろん中国にも認めるべきところは多々ある。

「批判精神は大事ですが、日本人が中国から見習うべきこともあるのではないでしょうか? 日本人は今の中国から何を学べるでしょうか?」編集者からこのようなお題をいただいたので、今回は中国の凄さ、学ぶべき点について紹介したい。

私は毎月のように中国に出張しているが、訪問するたびにその変化の早さに驚いている。高層ビルが竹の子のようなペースで伸びていき、次から次へと地下鉄がオープンする。新しいショッピングモールも増えていく。

先日、山梨県のリニア実験線近くを通りがかったのだが、1996年の開設から20年以上が過ぎた今も営業運転は実現していない。今の計画では2027年の開業を目指すという話だが、まだ10年も先である。中国ならばおそらく数年のうちに作ってしまうだろう。

建築物だけではない。日本では政治家やエリートサラリーマンがガラケーを使っていても不思議には思われないが、中国だったらどんな趣味人なのかといぶかしがられるだろう。スマートフォン普及率は日本よりもはるかに高く、しかも便利なサービスが少なくない。

例えば、スマホを使ったモバイルペイメント(決済サービス)だ。アリババのアリペイ、テンセントのウィーチャットペイという2大サービスが席巻しており、大都市ならば現金を取り出す機会はないと言っても過言ではない。コンビニでもスーパーでもスマホのアプリで簡単に支払いができる。

たんに現金の代わりになるだけではない。モバイルペイメントを使った関連サービスも発展しており、個人間でも気軽に送金できるほか、公共料金や電話料金の支払いも楽々だ。駐車場も、車のナンバーを読み取ってスマホに使用料を請求するスタイルが普及しつつある。

仕事の連絡も変わった。昔はなにかというと電話していたが、今では緊急時以外には使わない。大部分の連絡はスマホのメッセージアプリ「微信」(ウィーチャット、WeChat)を使う。みな忙しい日々を生きているのだ。急に電話がかかってきて仕事が中断されてしまっては非効率だ。

最近では私も突然電話がかかってくるとムッとするようになってしまった。日本にもLINEがあるのだが、日本人の意識が保守的すぎるのだろうか。仕事の連絡には使わないという人が大半だろう。

【参考記事】中国SNS最新事情 微信(WeChat)オフィシャルアカウントは苦労の連続!

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領

ワールド

仏大統領、欧州防衛の強化求める 「滅亡のリスク」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story