コラム

AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択

2025年11月20日(木)18時05分

大学進学ではなく職業訓練学校を目指す若者たち

最先端を行くアメリカの大手企業では、既に大量の人員整理が始まっており、ホワイトカラー層の労働者は、極めて高いスキルや実績がないと採用されにくい環境となりつつある。こうした事態を受けて、一部の若者は大学や大学院に進学するのではなく、職業訓練学校を目指し始めているという。

こうした状況に拍車をかけているのがトランプ現象によるグローバル化の縮小とインフレである。グローバル時代には、外国から安い労働力を大量輸入することができたが、自国中心主義が高まっている今、各国とも移民を受け入れにくい状況となっており、労働力不足が深刻となっている。


ホワイトカラー層についてはAI化で人材余剰が激しくなる一方、これまで主に外国人が担ってきたブルーカラーの仕事が極度の人手不足になるというちぐはぐな状況と言える。加えてインフレが進んでいることから、人手不足が顕著なブルーカラーの賃金が上がりやすくなっており、ホワイトカラー層との雇用環境の違いが鮮明になっている。

アメリカほどドラスティックではないものの、日本でも起きている現象は同じであり、ホワイトカラー層が大量に余剰となる可能性はそれなりに高い。保守的な高市政権が本格的に外国人労働者の流入を制限するような措置を取った場合、ブルーカラーを雇用する業界が極度の人手不足に陥るのは間違いないだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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