シェアライド議論の背景にある、新ビジネスに「感情的に反対」ばかりする日本人の「損」な気質
AMR ABDALLAH DALSH–REUTERS
<今になって慌ててシェアライド議論が盛り上がっている様相は、かつての「大店法」のケースとよく似ている>
これまでほとんど進展が見られなかったライドシェアに関する議論が急激に盛り上がっている。ライドシェアについては、2015年のウーバーの日本進出計画をきっかけに議論の対象となったものの、タクシー業界の猛反発に加え、世論も反対の声が大きく、日本では実現せずに現在に至っている。
ここにきて、急きょ、ライドシェアの導入が検討されているのは、地方の人口減少やタクシー運転手の高齢化など、日本経済の構造問題が抜き差しならない状況となり、ライドシェアがないと移動手段を確保できない地域が続出しているからである。こうした現状を考えると、議論が進むことそのものは必然であり、意味のあることと言えるかもしれないが、一方で議論をスタートするのが遅すぎたという指摘は免れないだろう。
日本では何か新しいことを始めようとすると、まずは感情的な反対論一色となりがちだ。後になって必要性が強く認識されるようになると、今度は十分な検討もせず、電車に乗り遅れるなとばかり拙速に導入してしまうケースも少なくない。
かつての「大店法」とコンビニの教訓
今回の騒動は昭和時代に大きな政治問題となった「大店法」のケースによく似ている。
1960年代、各地で大型スーパーの出店が相次ぎ、地域商店の経営が脅かされるという懸念が生じた。このため政府は73年に大規模小売店舗法(大店法)を施行し、大型店の出店を厳しく規制するようになった。これによって小売事業者は大規模な店舗運営ができなくなり、アメリカのように大量の商品を安値で販売するという手段が日本では断たれてしまった。
状況に苦慮した大手事業者は、法の網をかいくぐる形でコンビニに活路を見いだし、結果的にコンビニが全土を埋め尽くすというかなり特殊な状況になった。言い換えれば、日本型コンビニというのは政府の規制が生み出した独特な業態と見なしていいだろう。
では大店法が地域商店を守ったのかというとそうではない。結果的に無数のコンビニがあらゆる地域に出店し、地域商店は駆逐されてしまった。消費者も大きな利益を得ていたとは言い難い。コンビニは店舗の面積が小さく運営効率が悪いため安値販売ができない。結果としてコンビニはしばらくの間、定価販売が原則となり、日本の消費者は高い買い物を強いられた。
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