コラム

世界の反イスラエルデモは倒錯している

2023年11月30日(木)17時30分

ガザの「反ハマスデモ」を弾圧するハマス

ガザ地区の人口約200万人のうち7割近くが貧困ライン以下で生活し、60%が食料難に陥っている一方で、ハマスの指導者トップ3であるイスマイル・ハニヤ、ハリド・マシャル、マウサ・モハメド・アブ・マルズークはそろってカタールで優雅に暮らしている。彼らは不動産や事業を保有し、資産総額は110億㌦に上る。その一方で、ガザ住民を重税で苦しめている。2019年3月に「われわれは生きたい」と標語を掲げた対ハマス抗議デモが発生すると、1000人近くの参加者を殴打したり、拘束したりした。このようにガザ住民を暴力で苦しめているのもハマスだ。

ハマスは10月29日、世界で発生している親パレスチナのデモを称賛する声明を出し、イスラエルに対し、虐殺をやめさせるべく圧力をかけ続けるよう呼びかけた。

パレスチナ人の病人や子供を「人間の盾」として利用し、ロケット弾の誤射で殺害し、抗議する人を弾圧し、重税をかけ自らは私腹を肥やしてきたハマスが、世界の人々と反イスラエルで連帯する。この倒錯に、なぜか多くの人は気付かない。

ハマスが残存する限り、パレスチナの人々は利用され、搾取され、死に追いやられる。イスラエルに見当違いな抗議や攻撃を続けたところで、パレスチナは決して解放されはしない。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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