ウォール街、マムダニ氏の「アフォーダビリティ」警戒 風向き見極め
写真は市長選で勝利した民主党のゾーラン・マムダニ氏。11月4日、米ニューヨーク市クイーンズで撮影。REUTERS/Kylie Cooper
Lewis Krauskopf Saeed Azhar
[ニューヨーク 4日 ロイター] - 4日投開票の米ニューヨーク市長選で民主党のゾーラン・マムダニ氏が勝利した。ウォール街は、同氏の民主社会主義的政策がNYのビジネスや競争力に与える影響を懸念し、市長就任後の采配に身構えている。
4日はバージニア州とニュージャージー州でも州知事選挙が実施され、いずれも民主党候補が制した。昨年の大統領・議会選挙以降、沈滞ムードだった民主党としては、来年の中間選挙に向け勢いづく契機としたいところだ。
マムダニ氏の勝利について、インガルス&スナイダーのシニアポートフォリオストラテジスト、ティム・グリスキー氏は「彼がどの程度ニューヨークを変えようとするのか、そしてどのように受け入れられるのか、興味深い実験になる」と述べた。ニューヨーク市、ニュージャージー州、バージニア州で民主党が「全勝」を収めたことは、「ワシントン(トランプ政権)に対するかなり強い反対の意思表示だ」と指摘した。
ウォール街が警戒するのは、マムダニ氏が前面に出した「アフォーダビリティ」だ。社会民主主義に基にアパートの家賃凍結、無料バス、子育て支援などを提供する一方で、富裕層への増税や法人税引き上げを計画する。市長がウォール街を直接監督することはないが、ビジネス寄りかどうかは重要なポイントだ。多くの投資家や金融関係者は、アフォーダビリティの問題には共感できるとしながらも、税制政策は市の競争力低下につながりかねないと難色を示す。
「増税は中小企業レベルでは大きな影響がある」とオサイクのチーフマーケットストラテジスト、フィル・ブランカート氏は指摘する。
<骨抜き期待>
マムダニ氏が市長就任後に左派色を弱める、あるいは公約政策の頓挫を期待する声もある。
カーディフのディーン・リュルキン最高経営責任者(CEO)は、開票結果が出る前の段階で、マムダニ氏の勝利が「注目する2026年のリスク」に挙げた。同氏は、実際の政策は、選挙戦の美辞麗句よりもはるかに穏当なものになることが多いとしながらも、他の大都市でもマムダニ氏のような候補が勝利すれば、市場は増税、規制強化のリスクを織り込み始めると指摘した。
マムダニ氏の広報担当者は、育児支援などは仕事の継続でビジネスを支援し、より質の高い生活につなげられるとし、アフォーダビリティ政策は経済にとって良いと説明した。
<風向き変わるか>
今回の選挙は、来年の中間選挙の前哨戦だけでなく、1カ月を超えた政府機関の閉鎖を有権者がどう受け止め、その責任が共和、民主どちらの政党にあると考えているかを知る上で重要な意味を持つとされていた。
政権、上院、下院を共和党が握る現在の「トリプルレッド」が来年、下院だけでも「ブルー(民主党)」に塗り替われば、ワシントンが「膠着状態」が生じる可能性がある。
ハリス・ファイナンシャル・グループのマネジングパートナー、ジェイミー・コックス氏は、今回の選挙は共和党にとって「中間選挙に向けた大きな警鐘」と指摘した。MAIキャピタル・マネジメントのチーフマーケットストラテジスト、クリス・グリサンティ氏は「誰もが風向きを見極めようとしている」と語った。





