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アングル:ホワイトハウスに「刻印」残すトランプ氏、東棟解体し宴会場建設

2025年10月27日(月)18時47分

 10月25日、 トランプ米大統領(共和党)は今月15日、首都ワシントンのホワイトハウスにボールルーム(宴会場)を建設する計画に献金してくれる財界人らを前に、不動産で財をなした自身の心を躍らせたプロジェクトの始まりとなった会話を披露した。写真は23日、解体されるホワイトハウスの東棟(2025年 ロイター/ Andrew Leyden)

Jeff Mason

[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領(共和党)は今月15日、首都ワシントンのホワイトハウスにボールルーム(宴会場)を建設する計画に献金してくれる財界人らを前に、不動産で財をなした自身の心を躍らせたプロジェクトの始まりとなった会話を披露した。

「『どれくらい時間がかかるのか』と尋ねたら、『大統領、今夜から始められます。承認は必要ありません』。『冗談だろ』と言うと、『大統領、ここはホワイトハウスです。あなたは合衆国の大統領です。何でも好きなことができます』と言うんだ」

その数日後、解体作業員らがホワイトハウスの東棟をブルドーザーで取り壊し、この国屈指の名所の歴史ある一角をがれきの山に変え、歴史家、保存活動家、野党民主党、そして国民の怒りを買った。

トランプ氏は望むものを得た。3億ドルかけて新設する宴会場のための更地だ。この行為は、国家の規範や国際機関、そして世界秩序そのものに解体用鉄球を振り下ろすトランプ政権を、物理的に象徴しているかのようだ。

歴史家らは、この行為は神聖な信用の守り手ではなく、開発業者の荒技だと言う。

テキサス大の歴史学者、ジェレミ・スリ氏は「自分の名前が刻まれ、誰もが自分のことを思い出すような巨大なものを建てるという開発業者の考え方が、またもや出てきたのだろう。トランプ・タワーだ。彼は自分のためにタワーを建設している。ボールルーム・タワーだ」と語った。

トランプ氏自身も、アップル、アマゾン、ロッキード・マーチン、メタ・プラットフォームズの幹部らとの夕食会で、このプロジェクトがもたらす機会への興奮を隠さなかった。「不動産の人間として非常にエキサイティングだ。こんな場所は二度とないだろうから」

ホワイトハウスによれば、これらの企業全てが宴会場への資金援助を約束している。

トランプ氏はビジネスマンとして、ビルからステーキ、ネクタイに至るまで自分の名前を付けてきた。レビット大統領報道官は23日、宴会場にも名前が付けられると説明したが、名称は明らかにしなかった。

トランプ氏は24日、記者団に対し、自分の名前にするつもりはないと語った。しかしこの建物は永遠に同氏と結びつくことになるだろう。

ホワイトハウス歴史協会の元主任歴史家エドワード・レンゲル氏は「大統領公邸を凌駕する建造物が誰の目にも見えることになる。そしてその建造物には一人の男の名前が刻まれる。これは意図的なものだと思う」と話した。

トランプ氏はワシントンの再構築も図っており、文化施設ケネディ・センターを管理下に置き、2026年の米建国250周年を記念する凱旋門の建設を計画している。

<情報公開も協議もパス>

トランプ氏のチームと支持者は、宴会場計画への批判を「作り上げられた怒り」だと一蹴している。

トランプ氏の下で4年間働いたフロリダ州の不動産投資家アーマンド・グロスマン氏は「彼の所有する物件は全て一流だ。彼は費用を惜しまず、目利きも確かだ」と語り、「何世代もの人々が楽しむだろう」と称賛した。

過去のホワイトハウス改修は議会が承認し、資金を手当てしたが、今回は民間の寄付で賄われるため、監視面の制限が緩い。

ホワイトハウスは宴会場の設計図を国家首都計画委員会に提出する予定だとしているが、同委員会は建設のみを監督し、解体には関与しないと説明している。

レンゲル氏は「政権がこうした(制度上の)弱点を研究し、見かけより慎重に検討した上で、冷酷にその弱点につけ込んだのは明らかだ」と語る。

ホワイトハウス当局者らとトランプ氏自身は、宴会場のイメージ写真を見せ、意図を公に語ることで、作業の透明性を保ったと主張している。

しかし当局者らは、解体に関する監督権限を持つ機関を示せていない。

歴史家のエレン・フィッツパトリック氏は「トランプ氏による大統領権限の拡大解釈と合致する動きだ。これほどまでに劇的な出来事に先立って、公的な開示や協議、説明をほとんど要しないほどの権限を持っていると解釈しているのだ」と述べた。

ロイター
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