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アングル:NZ経済、乳製品価格下落が直撃 農家苦境・銀行も損失

2016年03月29日(火)12時35分

 3月29日、中国で粉ミルクの在庫がだぶつき価格が急落したため、世界最大の乳製品輸出国であるニュージーランドで農家の経営が悪化、経済全体を脅かしている。写真はハミルトンで2013年8月撮影(2016年 ロイター/Nigel Marple)

[ウェリントン 29日 ロイター] - 中国で粉ミルクの在庫がだぶつき価格が急落したため、世界最大の乳製品輸出国であるニュージーランドで農家の経営が悪化、経済全体を脅かしている。

ニュージーランドでは乳製品が輸出の約25%を占め、経済の支柱役を果たしてきた。しかし過去2年間で農家の収入は70億NZドル(47億4000万米ドル)も減少。現在、約85%もの農家が赤字に陥り、倒産の危機に直面したり、身売りを迫られたりしている。

農家の苦境は経済成長のほか、農業セクターに融資する銀行を脅かし、自殺者まで出る事態となっている。

農業セクターの債務は過去10年間で約3倍に膨らんでおり、2015年6月までの1年間では10%の急増となった。

ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は今年3月までの1年間の経済成長率が2.3%前後にとどまり、前年の3.6%から減速するとの見通しを示している。

ニュージーランド銀行(BNZ)の調査統括、スティーブン・トプリス氏は、乳製品価格の低迷が「経済全体に多大な悪影響」を及ぼしていると言う。

中銀は今月、銀行ストレステスト(健全性審査)の結果として、銀行が乳業向けの与信で3─8%の損失を出すとの見通しを示した。損失額は乳製品価格の下落度合いに左右されそうだという。

銀行による農家向け融資は約380億NZドル(251億3000万米ドル)と、総融資額の10%を占める。

乳製品価格は2014年初頭以来で約6割下落した。これは中国で粉ミルクの在庫がだぶつき、需要が減ったのが主因で、大半のアナリストは価格低迷が長引くと予想している。

メーホン・チャイナ・インベストメント・マネジメント(北京)のマネジングディレクター、デービッド・メーホン氏は、中国の在庫が現在、昨年とほぼ同水準の30万トン前後に上ると推計。「西側の農家、特にオセアニアの農家にとって非常に厳しい年になりそうだ。閉鎖される農家が出て、困窮するだろう」と述べた。

政府当局者は救済措置に乗り出す可能性を否定している。しかしネイサン・ガイ第1次産業相兼競馬担当相によると、銀行は農家を支える意向を示唆している。

(Rebecca Howard記者)

ロイター
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