ニュース速報

ビジネス

アングル:3連休控えドル急落を警戒、2月の再現なら110円割れも

2016年03月18日(金)19時23分

 3月18日、日本の3連休を控えた東京市場では、ドル/円が一段と下落するのではないかとの警戒感が高まっている。2013年2月撮影(2016年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 18日 ロイター] - 日本の3連休を控えた東京市場では、ドル/円が一段と下落するのではないかとの警戒感が高まっている。休日で国内勢のドル買い/円売りが途切れるなか、海外投機筋の仕掛け的なドル売りで急落した2月11日の再現に不安が強い。米利上げ観測の後退で、ドル安のモメンタムが加速しており、110円割れの可能性もあるとみられている。

<「悪夢の休日」>

ドル安/円高が加速しているタイミングで迎える日本の3連休。市場が警戒するのは、「悪夢の休日」(国内金融機関)の再現だ。

2月11日の建国記念日。日本勢のドル買い/円売りが枯渇するのを見透かし、投機筋が日経先物・ドル売りを仕掛けた。前日に113円台だったドル/円は薄商いのなか一気に急落、一時110.98円を付けた。

その後、日本当局のドル買い・円売り介入のうわさが流れ、相場は急反発。後日発表された1月28日から2月25日までの外国為替平衡操作額(介入額)がゼロだったことで、介入はうわさにすぎなかったことが明らかになった。

だが、神経質な展開は、今も市場参加者の記憶に残っている。

足元の市場モメンタムはドル安。16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)がハト派的な内容となったことで、勢いは一段と強まった。17日の欧州市場取引時間帯では、14年10月以来の安値110.67円を付けた。

こうしたなかで迎える日本の休日。投機筋の間では「110円をいったんは試さないと、気がすまないようなムードになってきている」(米系金融機関)という。

<ドル安地合い>

さらに日本企業の年度末が接近。海外子会社などからの期末のリパトリエーション(資金の本国還流)は、来週半ばにヤマを越えるとみられている。

しかし、これまでのところ「例年に比べて金額が膨らんでいない」(邦銀)という。

世界経済減速の影響で、業績自体が振るわないとの指摘もある。ただ、急激なドル安/円高の中で、売り遅れた実需筋からドル売り/円買いがこれから出てくれば、ドル/円を一段と下押す可能性もある。

昨年までは、利上げに乗り出す米国と、緩和を進める欧州中央銀行(ECB)と日銀という金融政策の格差から、ドル高・ユーロ安・円安につながってきた。

しかし、米連邦準備理事会(FRB)がハト派姿勢を強めてきたことで「これまでの相場での織り込みが修正されるストーリーを描きやすくなっている」(別の邦銀)という。

足元のドル/円について、市場ではネガティブ材料にしか反応しなくなっており、行き過ぎとの見方も根強い。りそな銀行・シニアクライアントマネージャー、尾股正寿氏は「ロジックではなく、投機的な力技に押されている印象」と話している。

<根強い介入警戒感>

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は、年内のいずれかのタイミングで106円付近への下落はあり得るとみる。

2011年の安値75.31円から昨年高値125.86円まで50円超上昇しており、このフィボナッチリトレースメント38.2%押しに当たる106円程度へのドル売り/円買いがなければ「ドルを売る人たちの安値警戒感や達成感、買いたい人たちの値ごろ感は出ない」(植野氏)という。

一方、短期的な相場反発への恐怖もある。急速な円高進行で、当局による為替介入への警戒感も強まってきており、17日の欧州市場取引時間帯にも、日銀がレートチェックをしたとのうわさが流れ、ドルが1円幅で急速に買い戻される場面があった。

日本の当局について、ドル高を懸念する米国に配慮し、実際の行動には乗り出さないとの見方もあるが「可能性は完全には排除できない」(当局情報に詳しい市場関係者)と、市場は警戒姿勢を緩めていない。

実際に介入があれば、ドル/円は少なくとも2─3円幅で上昇するとみられている。「介入で大きなトレンドは変えられないとしても、投機筋の体力ややる気は削がれ、下落スピードの調整はできる」(同)との見方が出ている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(3月8日までの1週間)によると、円の買い越しは8年ぶりの高水準。「いったん下方向を試して、やっぱり堅いとなれば、いつ巻き戻してもおかしくない」(別の国内金融機関)という。

足元のドル/円相場については「かなり悲観的なムードが、クライマックスに近づいている印象がある。いったん下値を試してしまえば、その後は反発しやすくなる気配もある」(別の邦銀)との声も出ている。

(平田紀之 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、26年に都市再開発・住宅市場安定化の取り組み

ビジネス

午後3時のドルは156円ちょうど付近へ反落、日銀利

ビジネス

金が最高値更新、米・ベネズエラ緊張で 銀も最高値

ワールド

ボルソナロ氏長男、穏健政策訴えへ 出馬意向のブラジ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中