コラム

追い詰められた民主党が苦しむ「バイデン降ろし」のジレンマ

2024年07月20日(土)21時08分

バイデン頼みで負け戦を続けるより、若手候補を立てる方が得策か

米大統領選には選挙人団制度という特殊な仕組みがある。各州には2票ずつ選挙人の票が割り当てられ、さらに人口に応じて選挙人票が上積みされる。一般投票で有権者が選ぶのは選挙人で、選挙人が大統領を選ぶ。この制度では人口の少ない州と共和党が有利になる。共和党員には田舎に住む人が多いからだ。そのため通常、民主党は一般投票の得票率で共和党を4ポイント上回らなければ、大統領選の勝率で共和党と五分五分になれない。

今年の大統領選ではペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、バージニアの4つの激戦州をどちらが取るかで勝敗がほぼ決まるとみられている。バイデンは一般投票の得票率ではトランプを上回ると選挙アナリストはみていたが、たとえそうなってもペンシルベニア州を制し、さらにいくつかの激戦州を押さえなければ勝利をつかめない。暗殺未遂が起きたとき、トランプがペンシルベニア州の田舎で選挙運動をしていたのはただの偶然ではないのだ。

バイデンに代わる、バイデンより1世代若い有力な候補者としては、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、イリノイ州のJ・B・プリツカー知事、ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事、ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事、そしてもちろんカマラ・ハリス副大統領らの名前が挙がっている。

代わりを選ぶなら、8月19〜22日にシカゴで開催される民主党全国大会でしかるべき手続きを踏むことになる。新たな候補者を立てれば有権者の関心がそちらに向き、トランプの独走を止められる可能性もある。

誰が指名されるにせよ、これから陣営を組織し、知名度を上げて資金を調達するなど数々の難題をクリアして、わずか10週間で有権者の信頼を勝ち取らなければならない。それでも、バイデン頼みで負け戦を続けるよりは、困難を承知で若い候補者を立てて全力で勝ちにいくほうが得策かもしれない。

バイデンによると、選挙は「コイン投げ」のようなもの。本当にそうなら勝率は50%だが、現状ではそれは楽観的すぎる見方のようだ。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ウニクレディトCEO、独首相にコメルツ銀買収の正当

ビジネス

米EVルーシッド、第2四半期納入台数が38%増 市

ワールド

焦点:困窮するキューバ、経済支援で中国がロシアに代

ビジネス

スターボード、トリップアドバイザー株9%超保有 株
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story