コラム

「片づけを諦めた」──アメリカ人の神「こんまり」の人間宣言の衝撃と「ときめき」の真髄とは?

2023年02月06日(月)14時04分
こんまり

こんまりメソッドはアメリカでも熱烈な支持を集めたが…… ADAM CHRISTOPHERーNBCUNIVERSALーNBCU PHOTO BANK/GETTY IMAGES

<アメリカの「こんまり旋風」は大量消費社会でのストレス緩和だけでなく、巫女の経験があるというスピリチュアルな要素にも理由が>

アメリカの「こんまり信者」の中には、裏切られたと感じた人もいただろう。

片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵が先頃、大量の仕事で多忙な毎日を送り、3人の幼い子供を育てる日々の中で「(家の中を整理整頓しておくことを)諦めた」と打ち明けた。「今の私にとって大切なのは、子供たちと過ごす時間を楽しむことだと気付いた」というのだ。

こんまりメソッドで身の回りのガラクタを片づけていた膨大な数の人たちの中には、この言葉を聞いた瞬間、すっかり気持ちが冷めた人もいたかもしれない。

私と妻は月に1度くらい、米東部ニューイングランド地方の築230年になる2階建ての納屋にあふれるガラクタを片づけなくては、という話をする。

「週末を何回かつぶさないと全部は片づかないと思う」と妻は言い、「毎週1箱ずつ段ボールを片づけるだけでも進歩だよ」と私が言う。こうしてこの2年間に片づけたのは段ボール3箱分。今回の告白で近藤も人間だったと分かり、私は少しときめきを感じた。

近藤が著書や動画配信の番組で説いたのは、限りあるスペースを有効に活用し、慌ただしい日々に秩序をもたらす方法論だ。

その際、捨てるものを無理に見つけようとするのではなく、「ときめき」を感じるものを手元に残すという発想で臨むことや、生活の重荷となるものの管理をポジティブに、優雅に捉えることを勧めている(私も子供たちと「洗濯物を畳む会」を開いて、退屈な作業を楽しいものにした)。

日本の住宅が狭いことは有名だが、ニューヨークのマンハッタンの住宅も同じくらい狭い。アメリカでも、近藤のようにポジティブなアプローチを説くチャーミングな人物の登場は待望されていたのだ。

しかし、アメリカで「こんまり旋風」が巻き起こった理由はほかにもあった。こんまりメソッドは、大量消費主義によるストレスを和らげるためのポジティブなアプローチという性格も持っていたのだ。こんまりメソッドの魅力は、捨てるものと残すものを仕分けする具体的な方法論を示したことだけにとどまらなかった。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米アメックス、感謝祭週の国内小売支出が9%増加=C

ビジネス

午前の日経平均は続落、朝高後に軟化 ソフトバンクG

ビジネス

米経済金融情勢の日本経済への影響、しっかり注視=米

ワールド

メキシコ、中国などに最大50%関税 上院も法案承認
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story