コラム

岸田政権の少子化対策はいまだに「家族主義」を引きずったまま

2023年02月09日(木)17時44分

他にも、抜本的な解決法にはならなくても、少子化対策にある程度貢献する制度の導入も、イデオロギーによって阻まれているものがある。たとえば婚姻に至らない理由として改姓問題をあげるカップルが一定数いるが、これは選択的夫婦別姓の導入によって簡単に解決できる。しかし家族同姓のイデオロギーによって、そのような簡単な制度改正で事足りることすら何十年も遅れている。

民主党から自民党への政権交代後の10年は、目下の最重要課題である少子化対策に関して、「失われた10年」であった。これからの10年間を、自民党が「少しずつ」変化する可能性に期待する時間的余裕はない。「反省する」という言葉だけでなく、保守的な家族イデオロギーときっぱりと決別しない限り、出生数は急カーブで落ちていくことになるだろう。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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