コラム

ベラルーシKGBの怪しいテロ捜査

2011年04月13日(水)15時02分

 旧ソ連の独裁国家ベラルーシの首都ミンスクで11日、死者12人を出した地下鉄爆破テロに対するKGB──そう、ベラルーシは未だにこの名称を使っている──の対応を見ていると、犯人が公正に裁かれるとはとても思えない。米政府が宣伝目的で運営する自由欧州放送(RFE)は次のほうに報じている。


 ベラルーシと捜査協力しているロシア連邦保安庁(FSB)のウラジーミル・ルツェンコ大佐は、罪のない一般市民を狙ったイスラム国際組織のテロであることを「100%」確信している、と語った。

「連中は平和な町で罪のない女や子供を殺し、皆を震え上がらせ、傷つける」と、ルツェンコは言う。「イラクやパキスタンではモスクを爆破し、モスクワではアパートを、アメリカでは超高層ビルを爆破する」

 爆破テロの背後にはベラルーシ当局かまとまりのない反政府勢力がいるという憶測については、「馬鹿げている」と否定した。

「モスクワのテロでも同じことが言われた。FSBの自作自演だとか、プーチンが権力掌握のために市民の家を爆破しているのだとか。何度も同じようなことを聞かされてきたので、今更何を言われても驚かない」


■独裁政権には弾圧強化の好機

 だがイラクやパキスタン、ロシアやアメリカと違い、ベラルーシはどう見てもイスラム聖戦士の標的リストの上位にあるとは思えない。ベラルーシでは過去にイスラム・テロが起こったこともない。過去5年間に2つの爆破事件はあったが犯人はわかっていない。外国が関与していることを示す明らかな証拠がないのであれば、犯人は国内の人間である可能性が強い。

 ベラルーシ当局は数人を拘束した。誰が犯人であるにせよ、ルカシェンコ大統領がこの機に乗じて国内の治安維持と、既に完全に骨抜きにされている反政府運動への弾圧を強化するのは間違いない。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年04月11日(火)12時38分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 13/4/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙

ビジネス

中国の乗用車販売、11月は前年比-8.5% 10カ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story