コラム

太陽公転周期に変化が...NASAの「小惑星に宇宙船をぶつけて軌道を変える実験」がまた一つ「宇宙の法則」を明らかにした可能性

2026年03月18日(水)22時30分

宇宙船の衝突によって、ぶつけられたディモルフォスのディディモスに対する周回時間だけでなく、二重小惑星系全体の太陽周回時間も短縮された、つまりいずれの場合も周回速度がスピードアップしたことは、「衝突によってディモルフォスの岩石の破片が宇宙空間に噴出したことが推進力となった」と考えられるそうです。

NASAの太陽系小天体担当主任科学者のトーマス・スタットラー博士は「これは軌道のごくわずかな変化だが、十分な時間が経てば、たとえ小さな変化でも大きな軌道修正につながる可能性がある」と語り、「研究チームによる驚くほど精密な測定は、運動エネルギーによる衝突が地球を小惑星の脅威から守る技術として有効であることを改めて証明するとともに、二重小惑星のうち片方に衝突するだけで軌道が修正される可能性を示している」とキネティック・インパクトへの期待を述べています。

地球への天体衝突は、多くの人が「一瞬で世界が終わりかねない最悪の災厄」と考える事象です。昨年は「25年7月に隕石が落下して日本に大災害が起こる」という都市伝説が日本中で話題になり、海外からの日本への渡航控えにまで発展したことは記憶に新しいところです。

とはいえ、天体衝突への対応は、早期発見のための観測技術にしても、キネティック・インパクトにしても、かつてはSF作品でしか考えられなかったレベルの科学技術が現実となりつつあります。探査によって、小惑星や太陽系の成り立ちへの知見も着々と増えています。天体衝突は正しく恐れ、宇宙の話題には楽しく触れたいですね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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